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スキップをするなんていう状況はおそらく漫画でもアニメでも浮かれに浮かれた主人公の誇張表現であり、リアルでやる人は体操選手しかいない。
……そう思っていた時期が、俺にもあったんですけどね。
「背中から羽でも生えてんのか久瀬。」
「なんで俺飛ばなくちゃいけないんですか。」
「じゃあそのうかれまくったオーラはどうした。」
会長さんに指摘されてはっとする。やばい表情筋緩んでいたかも。気を引き締めるがまた少しにへらと笑っていると、皐月君と目が合った。気まずくなる前に話を切り出そうかな。
「ねえ皐月君は合宿での班のメンバー決めた?」
「合宿って友情とやらを学ぶために二泊三日山奥に閉じ込められる明後日からのイベントのアレのことですか?いいえ。班すら作ってませんよ。」
「皐月君は合宿嫌いなんだね……俺は割と楽しみなんだけど。期間ももうないし班良かったら俺と組む?」
さらりと声をかけると皐月君の紅茶を飲む手が止まった。
「あなたと?それ、大丈夫なんですか?」
「生徒会メンバーが固まるとまずいって話?それならむしろばらける方が文句でるかなって思ったんだけど、まずい?」
「ああ、そういう理由でしたか。」
ぼそりと皐月君は呟いてから、軽く咳ばらいをして下を見た。
「ならお願いしましょうか。センリのことですからメンバーくらいさっさと集めてそつなく終われそうですし。」
その言葉は簡素で若干冷たく感じる。やっぱりなんとなくお互いに心のしこりは溶けていないみたいなんだよな。少し苦笑してからおっけーと返事して、皐月君の横顔をみつめた。
「まあ周りの子が妬いちゃうから班になりたいというよりも、皐月君と仲良くなりたいっていうのが本音なんだけどね。」
「……仲良く!?」
「今回は皐月君とか……雫とか。あとは二人くらいに声掛けようと思ってるんだけど、うまくいくかな。」
皐月君がこちらを見たのでにっこり微笑む。脳裏によぎる二人のうちの、片方はむっすり顔をどうせ崩していないんだろうし。もう一人は無表情だろう。小さなため息をつくと会長さんが俺に向かって言った。
「時間はいいのか久瀬。さっきまで大騒ぎしてただろうが。」
「あ!会長さんありがとうございます!遅れるところだった」
「初デートの学生かよ。」
会長さんの軽口に俺はいったん動きをとめて目を丸くした。
「なんでわかったんですか!?俺今からデートなんです!行ってきますね‼」
そのまま俺は勢いよく生徒会室を飛び出した。
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