一時間目 王道学園での俺的処世術

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 「会長さん……?」 千廣に掴まれた左手の反対を、生徒会長様が掴んでいる。その顔に表情はなく、冷え冷えとするような空気をまとっていた。 思わず、体が固まる。俺、この人を怒らせるようななにかしたっけ。波風を立てない人間関係をモットーにしている俺がうっかり八兵衛したのか。 会長様は何も言わず、俺の後ろに目線を持っていったまま、俺の腕を乱暴に引いた。 「ちょ、危な……」 そうだな。俺の今の体制は確保された宇宙人と類似している。だって千廣も会長様も俺よりでかい。解せぬ。じゃなくて、両腕を掴まれているのは非常に不安定な体制なわけで。 引っ張られた方向に見事に突っ込みそうになった俺は、会長さんにがしっと空いた片腕で腰を支えられた。 「久瀬。どこに行く。」 低い声が耳元でして、ビクリとした。俺は会長さんのこの声に弱い。低くしっとりとしていて、有無を言わせないバリトンボイス。耳に熱が集まるのを肌で感じた。 「あの、千廣と約束があるので。もうすぐ予鈴鳴りますし。」 まとまっていない回答を返すので精一杯だった。いきなりなんでこんなことを?嫌がらせだろうか。……そうに違いない。オキニイリの転入生黒毛玉爽クンを下手に俺があしらったのをお怒りなのか。ヤダ怖い。 伺うように会長さんの赤に近い瞳を覗くと口元がニヤリと歪んだ。 「なんだ。そんなに見て。キスでも強請ってるのかよ」 「イエ、それは遠慮したいですね。それより、あの、離してもらっても……」 「駄目だ。」 何故に。 会長さんの行動が摩訶不思議アドベンチャーワールドすぎてわからない。全力でもがきたいけど、どうにも身動きが取れない。駄目だ、一発蹴りを入れようとなんて考えては駄目だ。そう思ったあたりで、今度は逆方向に引っ張られた。 「生徒会長サン。なんの権利があって、貴方がこいつの行動を決めれるんですかね。こいつの意志でしょう?全て。」 とっても怖いお顔をした千廣クン。……ほんとに怖いお顔をした千廣くんが、会長さんに睨みをきかせてるようだった。
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