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何をかくそうこの俺、久瀬泉璃は数学はかなり得意な部類である。はっきり言えば全国模試でもこの学園の定期考査でも数学は満点で毎回主席にいるレベルで得意。会計を任されているのもそこら辺の数字の強さを買われているんじゃないかな。そんな俺は去年の後期に初めて同率一位という体験をした。成績が書かれた掲示板で奇跡くんの名前を見て興味を持ったのが……最初?彼もなんとなく俺を認識したようで、お互いの最初の会話は
「はじめまして好きな数学の定理は?」
「……はじめましてオイラーの定理です。」
という名前を聞く前にお互いの好きな定理紹介からはじまった。普段はチャラ男としてコミュ強の俺としても数学について語り合える友達ができるんじゃないかとだいぶ浮かれていたというのがお分かりいただけるだろう。
そこからは、定期的におもしろい定理を解いて証明し、美しさについて語り合ったりをしている。……ちょっと待ってくれ数学苦手な兄弟達。この人気持ち悪いとか思わないでほしい。ほら国語の授業でも気に入った綺麗な詩を家で読み上げたりするだろう?ニュアンス的にはそういう感じなんだ。
「相変わらず、久瀬さんはちょっと変わった解き方をしますよね……面白い。」
「逆にキキくんはいっつも最短証明してるよね。……綺麗だ。」
お互いの証明をほれぼれしながら見つめて多少修正を入れていると、ふとキキ君が浮かない顔をしていることに気がついた。それはまあ、家で飼ってる子亀がキャベツの食いつきが若干悪いくらいの変化だったが。
「キキくん悲しい顔してどうしたのー」
「……⁉」
びっくりしてその瞳がおっこちそうに見えたので、硬い口を開かせるには飲み物かと、カフェの店員さんを呼んだ。
「蜂蜜レモンソーダください。二つ。」
「いっぱい飲むんですね久瀬さん。」
「一個は君のだからね?好きでしょ蜂蜜レモン」
「あ、えっと、ありがとうございます。」
頭がいいのにどこか抜けているキキくんがかわいくてしかたない。そもそも俺は姉しか兄弟がいないので年下の弟とかそういう存在に憧れと愛しさみたいなものを抱きがちなのだ。ちまちまとジュースを飲みながらキキくんは口を開いた。
「明後日の合宿をどう休もうか理由が全く思いつかなくて。」
ohここにも合宿嫌いがもう一人。
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