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本日はお日柄もよく絶好の合宿日和。
登山というものをまるでご存じない様子のお坊ちゃま達は見た目重視の洋服を身にまとったせいで虫が現れるたびに絶叫し。荷物の持ちすぎでふらふらと倒れ先生方の救護車で回収されていった。体力自慢の運動部は大丈夫だったが、文化部は口から呪詛をまきだす生徒多数。そもそも合宿場のある山の半分までは超高級バスにて輸送してくれる優しいサービスもあったのに、何がそんなに気に入らないんだい。
と、思いつつも頂上はやはり見晴らしがよくて気持ちがよかった。
「だから、ね。ちょっと休憩しなよ。キキくん、皐月くん。雫」
「すみ、ません……」
「やっと頂上ですか。」
「何で僕10歳の奇跡くんと同じ体力なんだろう。」
約一名体力の無さを嘆いてる雫がいるがそこはスルーさせてもらう。相変わらずの無表情の千廣はどさりと二人分の荷物を下に落とした。
「白河さんごめんなさい……荷物持ってもらって。」
「気にするな。」
途中からキキ君の体力を鑑みたのか千廣は、キキ君の荷物も持って頂上まで登っていた。なんというか、小さい子にはかなり気をかけているのが微笑ましい。そっと見ていると他を気にかけろというように睨まれた。
それからは割とつつがなく、テントを立て、夕食準備を始めた。何を隠そう俺はわりと自炊大好き人間である。恋してくれてもいいんだぜかわいい女の子。メニューはなんとシンプルカレー。これで失敗するほうがあり得ない。
他の生徒たちはきっちりエプロンをつけた俺たち四人の姿を遠目で見ていた。
「やばくね?副会長様。意外と料理得意とかで、熱出た日に僕におかゆ作ってくれるんだよ。」
「妄想ヤメロ。でも、喜兎さんに会計様が教えてる姿こなれてね?チャラ男だけどちっちゃい子好きとかギャップでクルんだが。」
「それより月城さんだろ。あのエプロン≪わかってる≫わ。ちょっと他のエプロンよりリボンとかフリルとかついてるの解釈一致。」
「なんかエプロンは人妻感があって俺、会計様の手元だけ一生見てる。」
きらきらとしたほか生徒たちの想像通り、失敗するわけがない……のだが。
「ちょっと待った。その芸術的な野菜の切り方はどうしたの皐月くん。」
「キキ君。野菜の表面積求めなくていいから。そこまで均等もとめてないから。」
「雫は上手だね。安心感ある。だけど……その一口は小鳥さんサイズかな。」
つっこみが止まらない。
意外に不器用な皐月君は宇宙から飛来した石のように不揃いなじゃいもを生成し、キキくんは均等さを求めるあまり人参の面積をはかり始めて、雫は玉葱をみじん切りに。それぞれのフォローに入りながら俺の担当である肉を見ると見るからに霜降りのブランド牛。うわあ……最高級品。手を震わせる俺は庶民です。
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