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火の番を千廣がしてくれたおかげで比較的スムーズにカレー作りは進んだ。カレー以外の食材はプロのシェフが作るあたりはその財力のものすごさに若干引いてしまうが、最高に美味です。ありがとうございます。山のきれいな空気の中のご飯というのはテンションが上がる。
手を合わせて食事をはじめると、不思議な心地だった。誰かと食卓を囲むなんていつぶりだろうか。立食パーティーだとか、会議ついでの接待みたいなのは経験したけども。母や姉たちと普通にご飯を一緒に食べた記憶も少し前のこと。なんとなく友人とご飯を食べるという経験に俺も浮かれていたのだろう。
食事の次はお風呂なのだが。
「なんだろうね。これ。」
俺が教員から渡された紙には「専用風呂」と書いてある地図があった。普通の学生は大浴場が三つありまして、それを使用するか、いやな人は個別にシャワーを使えるように配慮してある。この山は過去は湯治場であったこともあり温泉が湧いているため、外の露天風呂では絶景も楽しめちゃうという素敵空間。できれば温泉つかりたいなとは言いましたよ。言いましたけど。
「専用にしないとなにかと問題が発生しますからね。特に我々はネコランキング上位ですから。」
「風呂場でも俺たち襲われる想定をしないといけないんだね。はあ。」
「で、でも!外湯もあるらしいし!楽しも!」
「皆さんどうされたんですか?」
後ろでキキ君が首をかしげる。ごめん君のはまだだいぶ早いお話なんだ。
専用と書いてあったがその風呂は十分に広かった。
脱衣所もしっかり仕切られておりさっさと浴室に向かう。オレンジのわずかな光だけが灯されていて落ち着く空間だ。洗い場で髪の毛きっしきしになるシャンプーは避け自分のシャンプーや洗顔グッツを持っていくと若干皐月君に引かれた。多すぎませんかとのこと。たった5種類ですのに。
お湯は乳白色でしっとりとしていてとても心地よい。俺がくつろいでいると、雫はじっと俺を見つめてから顔を赤くした。
「どしたの。雫。」
「髪の毛おろすと印象変わるって本当なんだね。」
「うん?そっかいつもは髪の毛あげてるもんね。思ってたより長いでしょ。」
「……気持ち悪くなかったらだけど、触っていい?」
「ん?どうぞー」
雫は俺の髪を気に入ったらしくいじくっていた。ピンクメッシュしてる割には綺麗な髪なので自信はある。黙ってそこに皐月君が隣にはいってきた。キキ君は気まずそうだけれど、気持ちはわかる。
露天風呂にでも行こうと立ち上がった時、俺と皐月君の目が合った。その目線は足の内側。太股へ。……まあ気になるよね。
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