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またあの羽が疼く。厨二病かな。でも痛いんだ。あいつと共有した秘密をぐちゃぐちゃにされてる気分。
「怒られて、俺は人を頼らないって。同じなんだろって。
……なんなんだよ。何が言いたいんだよ。教えてくれないくせに。」
俺の中にどくろを巻く怒り。それは苛立ちだった。
俺にはいつも誰も聞かない。問いかけてくれない。自分で気づけって言うのだ。会長さんも委員長も千廣も。その度に分からない苛立ちに飲まれて。八つ当たりしたい気持ちになって。それ以上に自分を責めて。責めて責めて責めて。また、自分が大嫌いになる。
チャラ男の俺は飾り立てた俺。
飾りを剥ば、中身は……がらんどう。ずっと前から変わってないのだ。少しずつ自分なりに積み重ねてきたものも、俺の手についているのかわからない。砂粒みたいにこぼれ落ちているような気がする。
「なんていうか、自己嫌悪?」
キキくんを見ないでそうつぶやくと背中に軽い衝撃があった。彼と背中合わせになってるらしい。
「涙にはコルチゾールと呼ばれる成分があります。」
また小難しいお話?と思ってふんふんと聞き入ると、俺の沈黙を肯定と捉えたらしい。
「コルチゾールにはストレス成分を低下させる作用があるそうです。」
「これってつまり俺に泣けて言ってる?」
「ストレス解消になる合理的な提案です」
「ふふっ・・・・・・泣かないよ。俺は大人だからね。でも優しいねキキくん。」
優しい人は沢山いる。手を伸ばしてくれてる人も。握り返せないのは俺の弱さ。煮詰まった思考を流すみたいに立ち上がると山の空気は冷たく肺の奥まで染み込んだ。
トラブルが発生したのは、風呂をあがって髪の毛を乾かしたところだった。どこぞの小学生のように時間制限などないためのんびり髪の毛を乾かしていると、俺の携帯に連絡が入った。相手は.....風紀委員!?
くっそ真面目な2年の風紀委員は俺の携帯に短文を送り付けていた。
【生徒2名行方不明。点呼時におらず、連絡取れず。電波の入らないところにいる可能性大。遭難の可能性あり】
慌ててスクロールして、名前所属容姿を確認すると、ピタリと俺は止まった。
「メールこれ、泉璃.....」
「.....凸凹コンビだ。」
「はい?」
「この探されてる人さっき俺らがすれ違った人達だ。あれから.....今まで30分程度。それで急に電波の届かないところに行くか.....?なら、そこまで遠くにはいないはずだ。」
髪の毛を括りあげる。まだセットしてなくてサラッサラのなせいで非常にやりにくいが致し方なし。
「皐月くんお願いがあるんだけど。」
それを告げた瞬間俺は走り出した。
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