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一旦顔を伏せて、水気をふき取る。俺の近くにいる威圧感しかない面々、主に会長、委員長、そして千廣。あの人らはチンピラヤンキーなんかより断然怖い。ヤがつく自由業の組長集団だ。真似させていただこう。
ヤクザ屋さんの極意第一条!『威圧感を出しましょう』
俺は全力で壁を殴りつけた。ここはシェルター。音は響くはず。目論見通り、ダァンと激しい音はわんと耳鳴りのように響いた。
驚いて、一瞬動きをとめた二人に向かって俺は顔をあげる。
ヤクザ屋さんの極意第二条!『大声で怒鳴りましょう』
「無関係になるからほっとけだ?よくもしゃあしゃあとそんなことほざけるな。君らの頭は幼稚園児か小学生か?小学生だったら10歳のキキくんのほうがよっぽど他人に配慮できるわ。キキくんに謝りやがれ17歳児ども。お前らの為に何人の人間が今現在動いてると思ってんだ。その迷惑すら顧みれねえのならお前らは赤子か。赤子は泣くのが仕事だがな。てめえらは学生だろうが集団に属することの意味すら分かんねえのか馬鹿が。」
早口でまくし立てると効果的です。
ぽかんとしてる二人に向かって、俺は「座れッ」とビシリと言う。反射的に正座した二人。よろしい。
ここでヤクザ屋さんの極意第三条!『相手と会話し緩急をつけましょう』
「事情は理解した。けどな、君たちの命ってそんなに軽くないんだよ。元気いっぱいに喧嘩してるから心底安心したけども、途中で倒れていたら?どちらかが甚大な怪我をしていたら?それは考えた?」
「だってそれは学園の指示なんだろ……」
「学園の指示だからなに?そうだよ君たちが大嫌いな俺達学園の者がどれほど真剣に君らの命を案じてたか想像つかないだろうから教えてやるけど、捜索隊は100人余りが君らを探してる。この大雨と暗闇の中、リスクだって当然考えられるのにそれだけの人間が動く事態を君らが起こしてるわけ。事の重大さ理解した?」
「だって、俺らはこの学園出たら将来が……」
「それなんだけどさ。なんで須磨は親父さんを納得させようって考えなかったの?」
「え、えとその通りだし……」
「それでも有馬が好きなんだろ?」
「…………はい。」
「俺わかんないんだけどさ。」
立ち上がる。そして俯いた有馬君には俺の足が見えるようにぐっとつま先を近づけ、顔を上げた須磨君には目が合うように。目の前でしゃがみこんだ。これぞヤンキー座り。
ヤクザ屋さんの極意第四条!『最後は低い声できっちり脅しましょう。』
「自分の気持ちが通らないときは逃げることしか考えねえのか。ぶつかってどうにかしようともがくんじゃなくて、しっぽ巻いて遠くからしか吠えれない。いい加減にしろ親の下で甘い汁舐めてるだけのお坊ちゃま甘ちゃんヤンキー共。」
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