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しかし、プライベートでは何かの汚物を重荷として背負わされているような重圧を常に感じていた。そうして結婚してから3年目の或る日曜日、ダイニングで妻と夕食を取っていると、妻の香がぼそっと言った。
「いつも詰まらなそうね」
「えっ、そうか」
「そうじゃないの」
孝はあからさまではないにしろ思わず溜息をついてから言った。
「気にするな」
「気にするわよ。体の具合が悪いのかと思う位つらそうにも見えるんだもん」
「そ、そうか、元々こうなんだ。気にするな」
「元々こうなんだって誰だって時には喜ぶことが有るでしょ。なのにあなたときたらあたしの前ではいつもそんなじゃない。正直に言ってよ。私に不満があるんでしょ。私の何処が不満なの?」
「不満はないよ。お前はパートに出てるにも拘らず家の事はちゃんとやってくれるし俺の世話もしてくれる。今時珍しい従順な女だと思ってるよ」
「なのに何で鬱病みたいになってるの?家に居る時、全然笑わないじゃないの」
「た、確かに・・・」と孝が諒として絶句してしまうと、香は到頭、今まで聞きたくても聞けなかったであろうことを聞いた。
「ねえ、そんなに嫌そうなのに何で私を選んだの?」
正直に言えば、売れ残りの女の中でも最も貰い手がなさそうだったからとぶちまけなければならないが、勿論それは出来ない。妻まで憂鬱にして僕たちは破局し兼ねない。孝は考え抜いた末、こう答えた。
「おっぱいがでかいから」
「えー!ハッハッハ!ほんとに?」
「ああ、しかし、お前、そのままじゃ駄目だ。痩せなきゃいけないよ」
実際、太り過ぎているから乳がホルスタイン級に大きいのだ。
「ダイエットしろって言うの」
「ああ、直ぐに痩せろとは言わんが、徐々に徐々にな。継続は力なりと言うだろ。そのようにダイエットをルーティンとして続け少しずつ痩せるのが良いんだよ」
「分かったわ。やってみる!」
香は孝の不満を概ね理解したらしく快く了解してやる気満々になるのだった。
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