人生が変わったある男の話

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人生が変わったある男の話

 俺は今、悩んでいる。途徹もなく悩んでいる。見ようと思っていた番組を見逃すほどには。  しかし、そんなことは些末な問題だ。なぜなら俺は今、大きな選択に迫られているのだから。   "必ず幸運が訪れる御守り"  目の前、パソコンに映るのは広告だ。サイト閲覧中に現れた。かなり胡散臭く、悪徳商法の臭いがプンプンしている。  しかし、感じ取った上でブラウザバックしないのは、重大な事情があってのことだ。    俺は今、生きるか死ぬかの局面に立たされている。と言っても、会社での話だ。  現在俺は、とあるプロジェクトの指揮を任されている。それも、会社の存続に影響を及ぼしかねないプロジェクトだ。  責任を押し付けるように抜擢された上、その経過が芳しくなかった。  もしプロジェクトが破綻すれば、待つのはクビか、降格か。どちらにせよ、向けられる目は確実に変わるだろう。  幸い、俺に守るべき家族はいない。しかし、独り身でもプライドと言うものはある。あと、減給になると趣味のプラモ収集が出来なくなる。  だから何としても、どんな手段を使っても、成功へ導くしかなかった。  ――と言った事情があり、俺の心は激しく迷っている。
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