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「へ、なに……これ」
薔薇の花束。それも半端な量じゃない。
100本近くあるんじゃないだろうか。
花束の向こう側から室町が顔を出す。
そうして驚く私の横を素通りすると、母さんの前まで歩み寄る。
「ご婚約、おめでとうございます」
言って、巨大な花束を差し出した。
「これ……私に!?」
「はい、もうすぐ、政宗さんになるんですよね」
母さんが花束を受け取って、その重量に歓声を上げる。
「こんな大きな花束、初めてだわ……なんだか夢みたい!」
まるで少女のようにはしゃぐ母さんの姿に、私も嬉しくなった。
室町は花なんか買うタイプじゃない。
でもきっと、私が家を出た後に感じる、母さんの喪失感を埋めるために、柄にもないサプライズを用意してくれたんだと思う。
ほんと……天性の人たらしなんだから。
「室町、ありがとね」
母さんに聞こえないよう、彼にささやく。
すると室町も私の耳元に口をよせ。
「今度、お前にも買ってやるよ」
と、微笑んだ。
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