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「室町さんはなんて?」
「驚いてた」
「朝子さん、財閥を敵にまわしましたね」
「なんでそうなるのよ」
「だって、室町物産の社長が署名した婚姻届を破いたわけでしょう? 今後、暗がりをひとりで歩くのは控えた方が――」
「ゆきりん、楽しんでない?」
ちなみに室町の家は財閥系ではないし、当然、スナイパーでも反社会的勢力でもない。
「でも、どう考えてもまずいですよね」
ゆきりんを一睨みした田部ちゃんが、心配そうに言う。
「……うん」
「喧嘩して婚姻届を破ったので、もう一度書いて下さいなんて言えます?」
「だよね」
「じゃあ、ゆきりんと田部さんで証人になればよくないですか?」
ああ、能天気なあなたに救われます。
「善は急げ、さっそく市役所に行きましょうよ」
「ステイッ!」
立ち上がりかけたゆきりんを、田部ちゃんが威嚇して座らせる。
「ゆきりん……犬じゃないもん」
「だったら、しばらく大人しくしてなさい」
田部ちゃんに言われ、しょんぼりしてしまったゆきりん。
「まあまあ、田部ちゃん……ゆきりんも、ありがとね」
「朝子さあん!」
「でもさ……考えちゃうんだ」
「なにをですか?」
「室町との結婚」
「えええっ!?」
またもや、ふたりの悲鳴が鼓膜を揺らす。
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