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「っ、もう!」
どうしてこのひとは、こんなに甘い台詞を吐くのだろう。
一気に顔が熱くなり、慌ててうつむいた。なのに彼の指が顎に添えられ、グッと持ち上げられる。
「顔、隠すなよ」
「私は室町と違って、こういうのには慣れてないのっ」
「俺だって、こんなクソ恥ずかしいこと言うのは初めてだよ」
言いながら肩をすくめる彼の頬も、こころなしか赤く染まっている。
「あ、恥ずかしいって自覚はあるんだ」
「お前って、ムードをぶち壊す天才だな」
思わず漏れた心の声を拾った彼は、苦虫を噛み潰したような顔をした。
と思ったら、いきなり視界が変わる。横抱きに抱え上げられたのだ。
「きゃっ、な……なに!?」
そのまま足早に歩く彼の腕の中でもがく。
けれどもしっかりと体を拘束されて逃れられない。
「ちょっ、どこに行くのよ!」
「ベッド」
「は? なんのために」
「ベッドですることなんて、ひとつしかないだろ」
「ちょっと待って、脈絡がなさすぎる」
「そうか?」
室町はこの3年で変わった。
凄く大人になったし、以前よりずっと優しくなった。なのに発情スイッチだけは、相変わらず壊れたままみたいだ。
「ねえ、カレー、冷めちゃうよ」
なすすべもなくベッドに沈められた私は、最後の抵抗を試みようとする。
でもしっかりと私の両腕をシーツに縫い付けた彼は「カレーはいったん冷めたほうが美味いんだ」と、最もらしいことを言う。
まあ、なんにせよ、こうなった室町を止めるのは至難の業だ。諦めて目を閉じようとしたとき。
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