最終章・かくしてふたりは

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「なあ、朝子」 私の頬に熱い指先が触れた。 そうして彼は、まるで吐息を落とすみたいに切なげな声を絞り出す。 「お前のいない3年は、思いのほか長くてきつかったぞ」 私をまっすぐに見つめる深い藍色の瞳。 光の加減で濡れたように見えるその目に、視線だけでなく心も奪われる。 離れていた時間、彼がどんなに私を思っていてくれたのか。 室町の愛情が、頬に触れている指先から体の中に流れ込んでくるような気がした。 「だったら、もっと早く迎えに来てくれたらよかったのに」 私が言うと、彼は大まじめな顔をして首を横に振る。 「いや、次こそは完璧に仕留めようと決めていたからな、それなりの準備が必要だったんだ」 「仕留める!?」 予想外の言葉に、声が裏返った。 「なによそれ、ハンティングとか釣りじゃないんだから」 獲物あつかいされたことにムッとして、頬を膨らませる。 すると彼はクッと喉を鳴らして妖艶に笑うと、頬にあった指を動かし私の唇をなぞった。 「安心しろ、釣った魚にも過剰ほどに餌を与えるつもりだから」 「……えさ?」 私の質問に頷いた彼は「そう、例えばここ――」と耳元に唇を寄せる。 同時に感じた、ゾクリとした刺激。 「ひゃっ」 耳の淵を舌先で撫で上げられ、悲鳴を上げる。 「朝子は耳が、いいんだよな」 「なっ、違っ――」 抗議しようとした声は新たな刺激によって喉の奥へ追いやられる。 耳孔に侵入した舌が、卑猥な音を脳に直接に運び込む。 そんなはずはないのに、頭の中まで掻きまわされているみたいで、一瞬にして理性を奪われてしまう。 「それに、ここも」 「くっ……んん」 舌の動きに気取られていると、すっと腰のラインを彼の指先が滑る。 こうなるともう、完全に彼の思うがままだ。 つぎつぎに快楽のポイントを暴かれ。私は淫らな声が漏れないよう、必死で唇を引き結ぶしかなかった。
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