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「実は彼女……会社で吐いてしまったんですよ」
「え、そうなの?」
流石の母も心配そうな声をあげたけど、室町が被せて否定する。
「大丈夫ですよ、ただの食べ過ぎだったんで」
「なっ、吐くまで食べるなんて、朝子あんた、辛いことでもあるの?」
バカ室町、いきなり失敗してるじゃない!
慌てて振り返った私は、ギロリと彼を睨みつける。
「違うよ母さん、これには理由があるのっ!」
猛スピードで思考を巡らせ、そうだ、これだと思いつく。
「ラーメン屋のイベントで、大食い無料キャンペーンってのがあってね」
「まさか……それ、参加したの?」
「ラーメン特盛、餃子は5皿! 女子の部、成功者は私だけだって」
嬉々として説明したんだけど……。
あれ? おかしい……。
私を見る母の目が、軽蔑に満ちていく。
「ああ、情けない。室町さん、こんな子のどこがいいんですか?」
「えっ?」
「はっ?」
母の質問に、室町と私の声が重なった。
まずい、盛大な勘違いをしている――。
目玉だけ動かして、彼と意思相通を図ろうとするけど、母はさらに私たちを困惑におとしいれる。
「本当はね、いい加減この子を田舎に連れて帰るつもりだったんですよ。恋人がいる、なんて言ってるけど、一向に紹介する気配もなけりゃあ、年中、会社にいるみたいだし。うちの子はきっと、二次元の恋人とよろしくやっているんだろうなと、不憫に思っていたんです」
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