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「ーーいないか」
汽車のドアから顔だけを出して、車掌は呟いた。
13丁目の駅には誰もいなかった。
耳がツンとするほど辺りは無音で、本当に生き物がいるのか疑わしくなる。相変わらず気味が悪い場所だ。だから普段はこんな風に覗いたりしないけど、今日の彼は気になることがあった。
昨日の女の子だ。
10丁目から来た14歳の子。
この駅で下りたあの子供。
もしかしたら考え直して、駅に戻って来ているのではと思ったのだが、姿は見えない。
車内と駅が無人でも、5分間は停車する規則になっている。
ーー時間になった。
あの子はやはり現れない。
「……無事だといいんだけど」
車掌は小さく言って、手動のドアを閉めた。
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