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三味線と女の嬌声がさざめく吉原も、夜明けの光とともに眠りにつく。
その暁光が差し込む、数瞬前。
この吉原で一番深く、そして一番静かな闇が広がる時分。
「……わっちの主さんが、また誰ぞかに殺されたらしい」
その闇の中で、つややかな唇が揺らめいた。
「お前は、何人殺せば気が済むんだろうねぇ? 日向」
「……花魁は、わっちだけのもんでありんす」
答える声は、まだどこかあどけない。
「わっちの花魁を身請けしようなんて下衆なんぞ、何人でも、何百人でも殺しんす」
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