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【7月18日】夏風邪
風邪をひいた。
とにかく具合が悪く、ベッドから起き上がれない。食事もなにもできないので、親友のここねに無理をいって来てもらった。
「ううー」
「だいじょうぶ? あんた、風邪とかひかないと思ってた。あ、でも今はもう夏だもんな」
「遠回しにバカって言われてる?」
「うん」
「ひどっえほえほ」
熱もあるし咳も出るのになんてひどい。病人に鞭打つこの仕打ちに耐えられず、わたしの体力はダウンした。
「はい。おかゆっぽいものを作ったから食べて」
ここねが差し出した器には、おかゆにしか見えない何かが入っていた。でも、とてもいい匂いがする。早速スプーンですくって食べる。
「お、おいしい……なにこれ……」
「おかゆっぽいものだよ。適当に余ってたものをぶちこんで、味を整えただけ。生姜も入れておいたから、喉とかにいいと思う」
「おいしいおいしい」
あっという間に完食。
そして薬をぬるま湯で飲み、ふとんで横になる。ここねは食器をせっせと片付けて、それからときどきわたしの体を拭いたりしてくれた。
「具合どう?」
「よくない〜」
「風邪は寝てりゃ治るよ。あと、ご飯はあんまりたくさん食べないこと。消化にエネルギーを使って、免疫が落ちるんだって」
「へえーっほえっほ……ここねは物知りだなあ」
なかなか寝付けないので、ただ横になっているだけの時間。ここねはわたしのそばにいて、スマホでゲームしたり読書したりしていた。
ときどきわたしの話し相手になってくれたり、時間を潰すのにもつきあってくれた。
「お母さんみたい」
「お母さんじゃないし……」
「うそ。わたし、お母さんにこんなに献身的に看病してもらったことない。ありがとう、ここね」
「別にわたし、なにもしてないけど」
「一緒にいてくれるじゃん。あ……うつしちゃったらごめんね」
「風邪はうつるものじゃなくて、かかるものだから。わたしが風邪ひいても、あんたのせいじゃないから」
「ここねぇ〜」
「だからってくっつくな! 寝てろ」
夜になるとさすがにここねは帰ってしまった。無理やり呼んでおいて、付き合わせるのも悪いし、帰ってもらえた方がわたしもほっとする。
明日の朝に良くなっていたらまずここねに電話しよう。それで、ここねが風邪ひいたら、わたしが今度は看病してあげるんだ。
まずは、おいしいおかゆの作り方から勉強しなくちゃ。
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