【7月21日】眼帯

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【7月21日】眼帯

「おはよー」  と、いつもどおりの挨拶をする日奈子の左目には、痛々しい白い眼帯が付けられていた。 「どうしたの?」 「実は昨日、突然闇の力が目覚めてね」 「いやそういうのいいから」 「なんか炎症ができちゃって。腫れが治るまでは、眼帯してなくちゃいけないんだって」  失礼ながら日奈子によく似合っていた。  日奈子はモデルのような長身と、それを打ち消してしまうやや猫背な立ち姿、長い前髪、八重歯の覗く口と、少し陰気な印象の女の子だ。美人ではあるけれど、いつも俯き加減に歩いているから、前髪でせっかくの顔が隠れてしまっている。 「似合う?」 「いや……似合うかどうかでいえば、似合ってると思うけど」  骨折した人が松葉杖をついていて、「おしゃれでしょ?」と言っても皮肉にしか聞こえないのと一緒だ。返事しにくい。 「あ、別にうつったりするものじゃないらしいから、安心してね」  日奈子はけらけらと笑った。口が大きく開いているのに対して笑い声は小さかった。  眼帯がついているだけなのに、とても痛々しい印象を受ける。日奈子の目が覆い隠れてしまったことで、わたしは、日奈子の目に魅力を感じていたことを自覚した。 「はやく治るといいね」 「そうかな。意外とつけ心地良くて気に入ってるんだ、これ。寝る時もつけてるくらいだし」 「ふぅん」 「なに? はやくとって欲しいの?」 「うん。はやくとってほしい」  日奈子はあらわになった右の目を細めて笑った。 「うれしい。ありがとう、心配してくれて」 「そりゃあ、病人を心配するのは、当たり前でしょ。黒板とか、見え辛かったらいってよ、ノート取るのとか手伝うから」 「いや、授業中は寝るからいいや」  ふんっと自慢げに日奈子がため息をついた。 「どう? 片目閉じて寝てても、バレないの。便利だよね」 「そ、そうだね……」
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