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【1月4日】雪の降る駅
「うーっ、さむ」
「さむいねー」
「さむい」
「なんでこんなにさむいんだろー」
「冬だからでしょ」
「そうだけど」
「てかさ、進路平気?」
「平気って?」
「受験とか、就職とか」
「とりあえず進学かな」
「大学? 専門?」
「四年制の大学」
「私立? 公立?」
「すごい聞くじゃん」
「気になるから」
「なんで?」
「もしかしたら今年が、ふたりで過ごせる最後の冬かもしれないでしょ」
「そんなことないよ」
「だって、場所とか離れ離れになるかもだし」
「だったら会いにくればいいじゃん、年末年始くらい、大学もバイトも休んでさ」
「そううまく行くのかな」
「大丈夫だよ」
「良かった」
「てか、電車遅いね」
「田舎だもん」
「それに誰もいない」
「田舎だもん」
「田舎、関係なくない?」
「東京みたいに、みんな忙しいわけじゃないんだよ」
「そっか」
「手、あったかいね」
「でしょ。あっためといたの」
「わたしのために?」
「そうだよ」
「ありがと」
「なんか飲もうか、そこの自販機でさ」
「いいね。ミルクティーがいいな」
「あー、あったかいやつ、売り切れてるよ」
「じゃあコーヒー」
「あたしは紅茶でいいや」
「あっつ!」
「ほんと、あっついね!」
「ちょっと冷ましとこうよ、何分か」
「そうだね」
「まだ電車、来ないのかな」
「ねえ」
「なに? ……もう、しょうがないなあ。……なんか、外でするの、恥ずかしいよ」
「コーヒー、苦手なんだ。だから、飲んじゃう前に」
「あ、そうなんだ」
「そうなの」
「……ねえ、もう一回、しよ。コーヒー飲む前に」
「うん」
「もう一回」
「ん……」
「もう一回……」
「んん……」
「あ、電車きた」
「ふぇ……」
「ほら、いこ?」
「あ、うん」
「あ、雪……降ってきたね」
「さむいからね」
「来年も一緒に、雪、見られたらいいね」
「そうだね。東京だと、あんまり見られないだろうし」
「東京?」
「うん、東京の大学に行こうと思ってるんだ」
「そうなんだ……」
「来年は、受験勉強とか、忙しいかもだけど……」
「うん……」
「一緒に見ようよ、雪。その次の年も、ここで」
「そうできるといいね」
「てか、飲み物冷めてるんじゃん?」
「うわ、まじで? あーあ、サイアクー!」
「もう、そっちがずっとやめないからだよ」
「先にやったのそっちじゃん!」
「……」
「……」
「……アハハ!」
「ねえ、また今度買おうよ。自販機で。温かいやつ」
「いいね」
「次はコーヒーじゃない奴がいいかな」
「ううん、好きなのでいいよ」
「でも……」
「コーヒーの匂いのするキスなら、嫌いじゃないかも、わたし」
「自己責任でね?」
「分かってるよ。ほら、電車乗ろ。うわっ、暖かい! 暖房超効いてるよ!」
「なんか、暖かいのに、外は雪が降ってて不思議」
「こう言うのもいいかもね」
「でも、寒い外で、ふたりで見る雪も好き」
「わたしも」
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