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酔っぱらいの嘆きとチュールスカート
目の前のボタンを連打する。
それはもう、壊れるんじゃないかってくらいに。
早く、早く。
視界はぐるぐると回る。
平衡感覚も、何だかあやふやだ。
全身が熱をもって、頭がボーっとする。
可哀想なボタン。
こんなに連打されるためにつけられたわけではないのに。
「…やめろ、壊れる」
ボタンのすぐ上、スピーカーから聞こえた声に思わず口角が上がる。
「あけてよーう」
誰だ、オートロックなんてものを考えたのは。
こんなものがなければ、こんな風に家主の許可を取らずとも、家の中まで押しかけていけるのに。
そんなことを考えるあたしもオートロックにお世話になっている身なのだけれど。
「…もー、何時だと思ってんだよ」
声の主はそんなことを言いながらもオートロックを解除してくれたようだ。ウィーンという音と共に、自動ドアが開いた。
「ありがとう」
聞こえているのかどうかも分からないけれど、一応インターホンに向かってお礼を言って、足早に中に入る。
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