酔っぱらいの嘆きとチュールスカート

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早く、早く。 自動ドアをくぐって、すぐ目の前にあるエレベーター。 5階のボタンを連打して、それから閉じる方のボタンも連打する。 手に持ったバッグと、さっき立ち寄ったコンビニのビニール袋がぶつかってガサリと音を立てる。 中身が冷たいものばかりだから、袋の表面が濡れてぶつかったスカートの色をほんの少しだけ変えていた。 ふわふわ揺れるピンクのチュールスカート。 それに合わせた白のトップスに、ツヤツヤ光るエナメルのパンプス。 春っぽく、女の子っぽく。 ポン、と音が鳴って、エレベーターのドアが開く。 足早に向かった角の部屋。 ピンポーン、と、音が鳴るよりも前に玄関のドアが開く。 「…ちーちゃん、今何時か分かってる?」 呆れたようにそう言うのに、あたしが来るよりも前に迎え入れてくれた。 優しい、優しすぎる。 「ねえ、どう?」 部屋に入れてもらって、ごめんね、なんて言葉もなく一番最初にそう聞いた。 何が?なんて聞いてこない。
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