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「可愛いよ、似合ってる。ちーちゃんらしくはないけど」
「……うん」
「また1人で呑みに行ったの?」
「……うん」
いつまでも玄関から動こうとしないあたしを見かねて、バッグとコンビニ袋を手から持っていくと、反対の手であたしの手を優しく引いてくれる。
「こんなにお酒買ってきて、いつも飲み切らないくせに。俺の家の冷蔵庫ちーちゃんのお酒で溢れ返りそうなんだけど」
あたしよりも随分高くなってしまったその身長は、ここに来るたび、後ろを歩くたびに安心した。
昔はあたしと変わらなかったのに。
「ん゛~!こう゛ちゃーん゛」
「わあ、何その泣き声」
「うわあああん」
急に泣き出したあたしを、こうちゃんは驚くわけでもなくソファに座らせて、その隣に座った。
高さが一緒になって、安心したのか何なのか、余計に涙は溢れてきて止まらない。
横から抱き着いて頭をぐりぐりと擦り付ければ、痛い痛い、と痛くなさそうな声が頭上から聞こえた。
「今日は何?」
こうして頭をゴスゴスぶつけてもちっとも怒らないこの仏のような男は、小さな時からのあたしの幼馴染であり、保護者のようなものだ。歳は4つ上。
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