御曹司二人に取り合いされて胃が痛い。

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【財閥の御曹司】という属性がある。 この国には財閥がないので、正しくは【ハチャメチャにお金を稼ぐ家の息子】なんだけど、やっぱりここは財閥の御曹司と言っておこうと思う。 その属性の者はとにかく美しい。多分顔の作りに高貴さが滲み出すようになっているのだろう。そして大切に育てられたため自己肯定感が高く、いつも自信にあふれている。立ち振る舞いだってきびしくしつけられたため完璧だ。 そして教養高く、大抵の習い事はこなしている。勉強はできて当然。文武両道にスポーツもこなすし、なにか一つにのめり込むこともあれば、色んなことを挑戦して視野が広いこともある。 最後に、お金持ちゆえにたいていの物事をお金で解決する。世の中お金が全てじゃない、なんていうのはその通りだと強く頷くけれど、お金で解決できることというのはとても多い。 それが財閥の御曹司というもの。少女漫画に一人は出てくる存在だ。 確かに女の子は御曹司が好きだろう。御曹司ってなにかと派手なのでエンタメ向きだ。 だから、そう。私が御曹司二人に好かれている様子はきっとエンタメ的にはおもしろいんだろう。けれどこうしてリアルに存在している私には、胃痛しかない。 「文乃、一緒に帰ろう。今日は剣道部がないんだ」 「文乃さん! 素敵な紅茶のお店があるんです。一緒に行きましょう!」 今日もホームルームが終わると同時に二人の御曹司は私のクラスへとやってきた。 御曹司の片方、優(すぐる)は普段から無愛想な顔でもう一人の御曹司をにらみつける。 「また来たのか。残念だが文乃には先約がある。今日は諦めるんだな」 もう片方の御曹司、シモン君は青の瞳でしっかりと見ていた。お人形さんみたいにキレイなお顔に敵意が宿る。 「先約もなにも、文乃さんはまだ貴方と約束していないようですけど? 幼馴染だからって勝手に決めないでもらえます?」 また始まった。二人のこの取り合いが。 優は私の幼馴染だ。彼は歴史ある企業の跡取り息子。私と彼の父親同士が学生剣道のライバルで、その縁で子供の私達まで家族ぐるみで仲良くなった。見た目はいかにも日本男児な、すっきり整った頼りがいある美形。最近じゃ身長も伸びるわ剣道も強くなるわで、女の子のみならず男の子にも憧れられている。私としては生まれた時からずっと一緒だったからいまいちよくわからないけど。 シモン君も私の幼馴染だ。彼はとあるリゾート会社の跡取り息子。私と彼の母親同士が園芸好きで、海外と日本で文通して仲良くなって、私達も写真だけは交換してお互いの姿を知っていた。そんなある日、シモン君ファミリーが日本に来る事になり、私が不慣れな彼をサポートすることになった。 見た目は西洋の王子様みたいなきれいな人。髪は金髪で瞳はブルーでいつも笑顔で物腰が柔らかい。小さいときの写真じゃ女の子にしかみえなかったのに。 と、いうわけで、庶民である私は、現在御曹司達に取り合いにされている。 おとうさん、おかあさん。あなた達の交友関係が特殊すぎて、私の胃は痛いです。 「私達、距離を置かない?」 別に付き合っているわけではないけれど、この二人はぐいぐい来る。なのでそれを抑えさせようとする提案だけど、当然二人は猛反論して、私の放課後の予定はこの二人に埋められることになる。
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