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「誰にやられた」
先生は私の腕を掴んだまま
咽喉から静かな憤りの声が霧のように洩らしていた。首を横に向け噤むんでいるが、先生の威圧感は普通と違って、漆黒に包まれていたもので、黙ることが余計に難しい。
「…………覚えてないです」
「白を切るつもりか?」
無言続きの彼女に観念したか、桐生も黙って制服を渡した。そして彼はふと、背中に目がいき手を伸ばす。
「おい鷹嫻、背中に痕が…殴られたの……」
話を遮り、瞬時に彼女は桐生の手を勢いよく振りほどく。
「触らないで!!!!!!」
常に冷静な彼女が目の瞳孔を揺らしながら、動揺していた。
「……悪い」
「この事は内緒にして下さい、私も黙ります」
「でも誰かにやられたんだろ?これは上に報告すべきだ」
「そんな事をしてしまえば、この学園に捜査員が押し寄せて来ますよ。父は憤怒に満ちている事だと思います。私は面倒臭いことが嫌いなので」
「生きづらくないか_______________」
本当にこの先生は不思議だ、教師として正しいことをしているのに、何処か非道を犯しているような気がする。先程の威圧感も一般人が出せるものでは無い、。そして何よりその威圧は私がよく知っているモノに似ていること。
教師が私に情を移すと、ろくな事がない。だから私は、助けてもらいたい気持ちを押し殺して、心を閉ざす。それが一番互いの平穏に繋がるから。
「いいえ、鷹嫻家の人間として私は何不自由なく生きさせて貰ってるんです。では私はこれで失礼します。今頃SPが私を探していると思うので」
「待て鷹嫻!」
___________桐生先生、私は先生が思ってるような
_______________純粋で孅い女じゃないんですよ
警視総監の娘で、全て道理的に育てられ。非道なものは全て排除され、純正な人間しか接触する事を許されず、常に完璧であることを求められた。然し出逢は唐突で、私は初めて非道というものに出会った。心が痺れるほど、胸の鼓動が止まらないほど
目を輝かせていた。私は忘れられなかった非道を、身近に置くことにした。部屋の本棚の裏にある隠し扉。私しか知らない秘密の部屋。私は深夜この場所に消える。そして私は狂うのだ
この部屋中に広がる、煙草の香りと鉄の匂いをスーッと嗅ぎ、満足する。束ねていた髪を解き、漆黒の髪を掻き上げると、顔つきが変わる。紅い唇が似合う蠱惑的な女。
「嗚呼、どいつもこいつも屑ばっかなのよ」
優雅にガンプレイをし、バスローブを脱ぐと
彼女の背中は鮮やかであった。
「_______________…ヤクザになりたい」
部屋一式、ヤクザによる抗争の写真と立派な刀と銃が揃っていた
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