第一章 寵愛の引鉄

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第一章 寵愛の引鉄

私が通う、私立絢爛鏡学園は日本でかなり有名な お嬢様学校で、そしてかなりのセキュリティーが強 いと言われている。校舎を囲む鉄の塀は、槍の部分に電気が通ってある程、徹底されている。 そしてそんな学園で、かなり保護されているのが 鷹嫻祈莉。私の事です。一人娘の私は警視総監である父に酷い過保護の元生きています。この教室だけは至る所に防犯カメラが付います。之は父が強制的に設置したもので、異常があれば早急にSPが駆け付ける仕組みになっているのです。 私は溜息をつきながら、防犯カメラを横目で見ていた。季節は春、三分咲きの桜が幔幕を廻らせていた。三年となった私は新学期を迎え入れようとしています。 そして今日は、新担任がこのクラスに務める事になるのだという。その担任は、男であるということから、父が反論していたが、優秀な肩書きを持っているということで、事は収まったという。然し其れでも胸騒ぎするのは何故なのでしょうか。 噂をすれば_______________……。 「このS組の教師を務めることになった…」 皺のないスーツを身に纏う男は一気に女子が抑えた悲鳴を上げていた。その顔立ちの良い男は、黒板に自分の名を書いた。私はその整った綺麗な字に一瞬心を奪われていた。 「桐生 尊だ。担当科目は美術と体育、何か質問がある奴は」 その途端、女子達は興味津々にプライベートまで質問沙汰に聞いていた。私はこの空気が嫌い。何故なら私はこの場に馴染めないから。いいえ。馴染んではいけないから。関係の無い異性に関わるなど、私にとって御法度なのだから。 『(早く終わらないかな)』 最後尾の席で大きな窓ガラスの外を眺めながら、心の中でそう願っていると。いつの間にか教室には誰も居なくなっていた。恐らく、集会で聖堂に行った事だろう。では、何故私に声掛ける者が居なかったのか、其れは私の行動を指摘する者が存在しないからだ。私に近付けば面倒事が生じると、他の者は理解しているから。そのお陰で友人もいない。 『帰ろうかな』 鞄を手に取り、扉を開けると。新担任の桐生先生が息を切らして目の前に立っていた 「探したぞ……っはぁ……あんまおじさんを振り回すな」 「先生はまだ二十三じゃないですか」 「何で俺の年齢……あ、お前確か鷹嫻家のお嬢さんか、いやそれより一体何故帰ろうとしているのか理由を聞かせろ」 「何故言う必要があるのでしょう?桐生先生はお分かりですよね、昨日散々と学園長から言われたのでは有りませんか、私の接し方について」 「ああ、耳に凧が出来るくらい言われたな……丁重にとは言われたが、俺には、お前を空気のように扱えとしか聞こえなかった」 「それで良いのです。そこ退いて頂けませんか?」 動じない彼は、前に掛かった前髪を後ろにかきあげた。 「だが其れは鷹嫻の意志ではないだろ?俺は生徒の意志を尊重する」 「…………」 初めてだ、私に面と向かってそう告げるのは。 先生は何も恐れていない、凛とするその立ち居振る舞いは、私の憧れに似ていた。 「だから、来い」 手を差し伸べる先生だったが、私は慌てて先生との距離をとるが既に遅かったようだ。いつの間にかSPが現れ、私を囲む。戸惑う先生は「はあ?」と悪態が漏れていた。 「祈莉様ご無事ですか?何処か怪我は有りませんか?!」 「…だ…大丈夫です」 「桐生 尊だな、昨日言われた事忘れたのか?祈莉様に対し可笑しな行動をするなと」 「今のが可笑しな行動か?お前達は出来損ないだな、正しい判断が出来ない」 「何だと貴様……その無礼な態度今すぐ……!」 重い空気に彼女は震えた声で話を止める。 「せ、先生は何もしてません……今日は体調が優れないので私は帰宅します」 「然し、旦那様が……」 「この件は目を瞑って下さい、では桐生先生御機嫌よう」 彼女が廊下に出ると、それに着いて行くSPは周囲を警戒しながら彼女を護る。 「_____________この件って……ただ手を差し伸べただけで……か?」
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