人でなし

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夜の十時を過ぎた頃、噂の洋館へと向かった。 町の賑わいから外れ、手入れのされていない道を通る。木々が好き放題に伸びていて、時々服に引っ掛かる。 その木々のせいか、やけに生暖かい風が流れている。まるで洋館から何かが漏れてきているようだ。 洋館の前まで来ると、先程までの道よりは整っていた。だが噂通りに、街灯などはひとつもない。 錆び付いた門の前には草木もなく、門の向こうに至っては歩きやすいよう舗装までされている。 赤いレンガ調の壁に深緑の屋根という洋館の配色が現実離れしていて、敷地内にも人が住んでいるような気配や痕跡はない。 外観だけで判断するならば、忘れ去られた洋館だ。噂は噂であり、中はただの空き家だろうとすら思える。 だが、ここに来るまでにかけた時間は無駄にしたくない。噂が真実かどうか、この目と耳で確かめたかった。 錆び付いているようだが、この門は開くのだろうか。試すだけ試してみようと、手をかけた瞬間──── 音がした。
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