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「ダメだよ!」  それは僕の妻である希海(のぞみ)の口癖だった。いつもそうやって可愛らしく、僕の行動や性格に苦言を呈すのだ。そして目の前にいる彼女はまた言葉を続ける。 「ダメだよ、そんなに悲観的なことばかり考えてちゃ」  僕は彼女に反論する。 「いや、むしろ君が楽観的すぎるんだ」 「どうしてよ」と、きょとんとした顔の希海が返す。  目の前の食卓に並んだ、彼女が作ってくれた料理は、ほとんどが魚介系の食 材を用いたものだった。この百年で、僕たちの食生活は大きく変容を遂げた、らしい。 「こんな異常気象が続く世の中で、そのうえ今回の新型ウイルスだろ? なんで希海がそれを前向きに捉えられるのかが、僕には分からないよ」  心からの疑問を僕は彼女にぶつける。 「そうじゃなきゃ、頑張っていけないもの」 「ただでさえ希海の仕事は危険なのに……」 「心配してくれて、ありがと。でも、あなたが心配性で悲観的すぎるだけだって」  そう彼女は笑いながら、箸で掴んだ煮魚を口いっぱいに頬張った。 「そんなことないさ」などと口にしつつも、僕は現在進行形で、この絶望的な現状について考えている。
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