そばに居られるならそれでいい

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迎えた誕生日。 その日、俺は有給をとった。 幸い、木曜日ということもあって翌日も有給をもらった。4連休だ。 前日の夜、仕事終わりに莉子が俺ん家に来た。0時ちょうどに苺がたくさんのったホールケーキにろうそくを30本たてて、お祝いした。 莉子は泣いた。 30年で1番幸せな誕生日だと。 俺も泣いた。 もらい泣きした。 何泣いてんの、と笑われた。 歳のせいにした。涙腺が脆くなっただけ、だと言い訳した。 「そろそろ、一緒に住まないか。もう少し広い家を探してもいいしその場しのぎで俺ん家でも」 毎日そばにいたい。 そう思ったら口に出ていた。 いや、前々から思っていた。けじめというかちゃんとしたい気持ちもあった。 「その場しのぎって」 「改めてちゃんというけど、俺は莉子との将来を考えてるから。その、引越しは今じゃない方がいいなら、と」 莉子は目を丸くして驚いていた。今度は俺が驚く番だった。 え、俺だけ?と。 「あ、ごめん。びっくりして」 「……莉子は俺と結婚は考えられない?」 「ちがうの。むしろ、祐ちゃんが考えてくれていると思ってなくて」 莉子は言った。 いちど辛い目を見ているから結婚には慎重になるはず。だからまだ時間がかかる、と思っていた、と。 「……莉子の貴重な時間をもらっているんだから、悠長なこと言ってられないって気持ちはあるんだ。だけど、もう少し時間はほしい。同じ場所で生活してみないと分からないこともあるし」 「靴下脱ぎっぱなし、とか?」 「それはちゃんとしてる」 「ふふふ。知ってる」 莉子はぎゅっと抱きついてきた。あまりみない甘えん坊モード。だけど、甘えてくれるのが嬉しくて、俺はもっと甘やかしたいと思う。 「ねぇ、今日から何するの?」 「何したい?莉子は」 その夜は抱き合って朝まで話をした。これからの未来について、俺たちの人生がとても楽しくて幸せなものになるように、と。 「そばに居られるならそれでいい」 end.
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