シュガーレスハニーミルク

3/6

2291人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
1日2回このカフェに立ち寄るのは俺のルーティンだった。朝、出勤前に立ち寄り、午後の一息つきたい時に足を伸ばす。注文するのはアイスコーヒー、一択だが。 この日は偶々会議続きでまともに昼も食べられず、こんな時間になってしまった。会社にいると捕まってしまうため、いつもならテイクアウトをするものを店内で過ごそうかと考えつつ通路で立ち止まりどこに座ろうかと迷ってしまった。 それがいけなかった。 原因は自分にある。 だからそれを伝えたのだが。 「あ、あの、クリーニング代を」 「大丈夫ですよ。会社に着替えはあるので」 「でも!」 「その代わり」 ここまで言っても引かない。きっと彼女は何を言っても引かないだろう。その目の奥がとても綺麗で、強い。こんな状況なのにそう思ってしまった自分は馬鹿だろうか。 「辞めないでください。誰にでも失敗はあるので」 幸い、溢れたコーヒーは新しいものに、テイクアウト用に変えてもらえた。昼食用に買ったサンドイッチも一緒に包んでもらう。店内でゆっくりしようと決めたものの、こうなれば長居はできない。 コーヒーの滲みが気になるし。何より彼女が気にするだろう。そう思って俺はその時その場をすぐに後にした。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2291人が本棚に入れています
本棚に追加