シュガーレスハニーミルク

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「いらっしゃ、」 翌日のことだった。いつものようにコーヒーを買いにいつものカフェに向かった。“研修中”のバッジを左胸に付けた彼女は俺の顔を見るなり面白いぐらい固まった。 「こんにちは」 「こ、ここここんにちは」 「そこまで緊張しなくてもいいと思いますが」 俺との会話を聞いた他のスタッフが心配そうに彼女に横目を向けた。だが、今日はレジ係。コーヒーを溢す心配もないだろう。 「あ、あのっ、昨日は本当に申し訳ございませんでした」 「もういいですよ。この話はこれ以上なしで。注文いいですか」 ここで止めないと彼女がまたひたすら謝り続けそうだと思った。だけど俺の伝え方が悪かったのか、彼女はまた顔色を失くす。 「も、申し訳ございません。ご、ご注文を、」 「アイスコーヒー、Lサイズで。持ち帰ります」 ピ、ピ、と頼りない指がレジのボタンを押していく。少し痞えながら注文の確認をとった。 「350円です」 「カードでお願いします」 「っ、」 カードを渡した際に少し指が触れた。それだけで彼女の身体は可哀想なぐらい跳ね上がりカードを落としてしまう。
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