シュガーレスハニーミルク

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「し、失礼しましたっ」 声が裏返りあわあわとする姿は可哀想になるぐらい取り乱していた。出口を塞がれたハムスターみたいでおろおろする様子がなんとも言えない。 言っておくが、俺にそんな趣味はない。自分が彼女を怖がらせているだけかもしれない、とは何となく、薄々気づいているけれどだからといって、これがデフォルト。それを砕くつもりはない。 「いえ。こちらも失礼しました」 昔から表情が少ないと言われていた。人並みに笑ったり怒ったりしているつもりだが、それも周囲に比べると人並み以下らしい。 おまけにプログラマーという職種で、PCと睨めっこ続きの日常の俺に表情という表情が欠落しかかっていることも何となく感じている。たまに同期に「表情筋大丈夫か」と言われるが、乏しくなっていることは自覚しているので軽く遇らうのだが。 「…本当に怒ってないので気にしないでください」 よく勘違いされるんです、と付け加えればまた勢いよく謝罪された。
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