そばに居られるならそれでいい

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あれからもうすぐ1年。 半年を過ぎたあたりから半同棲のような生活をしている。 週末はどちらかの家で過ごし、平日も俺が莉子の家に寄ったりして時間を共有してきた。 その中で知ったのは。 莉子は山陰地方出身で、三姉妹の長女。 真面目に見えるけど、カタブツではなく、むしろ発想はユニークで柔軟性のある思考をしている。 時々、俺と同じ歳なんじゃないかってぐらい大人びているように感じる時もあるけど、どこか抜けていて、そのギャップにやられる。そんな愉快な彼女にいつも助けられていると思う。 「元嫁のことは気にならんの?」 フェアじゃない、と思いつつも付き合ってから離婚歴があることを伝えた。だけど、莉子は「そうなんだ」のひとことだけ。怒ることもなく、不機嫌になることもない。「それがどうしたの?」というぐらい不思議そうに首を傾げていた。 莉子を不安にさせたくなくて、なんでも話そうと思っていた。だけど自分からペラペラ話すのもどうかと思ってなんとなく言わずにいた。 実際どう思っているんだろう。 本心はどうなんだろう。 その時の俺はどういう気持ちで彼女に問いかけたのかわからない。どこかで嫉妬して欲しかったのかもしれないし、嫌われることを恐れていたのかもしれない。 だけど莉子は。 ーーーー全然気にならない、といえば嘘になるけど、別に知りたいとは思わないの。今はわたしと付き合ってる。それが事実なら問題ない。 よくできた人だな、と思った。 根掘り葉掘り聞かれることを覚悟して聞いたのにむしろ拍子抜けした。 「聞いてほしいのなら聞くけど、誰だって知られたくないこともあるでしょ?」 いたずらに笑う。そんな彼女に救われたのは俺自身だった。
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