そばに居られるならそれでいい

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莉子は、付き合い始めたころ、よく笑かしてくれた。 “良いお嫁さん”になりそうな彼女なのに、社会人になって一度も交際相手がいなかったという。 学生時代付き合っていた彼とは就職して自然消滅した、と言っていた。だからか、どう付き合ったらいいのか分からない、と不安げで。少し頓珍漢なことを言ってみたりしていた。 化粧を濃くしてみたり、普段パンツルックの彼女が突然スカートを履き始めたり。 彼女がしたくてしているならまだしも、傍目で見ても無理しているようにしか見えなかった。 だけど、俺の隣に並ぼうと背伸びしようとしている彼女が可愛くて、しばらく黙っていたけど、方向性が違うことを伝えれば泣きそうな顔して戸惑っていた。 学生も大人も何も変わらない、といえば。 莉子は安心したらしく、いい意味で肩の力が抜けた、らしい。より自然で付き合っていくことができた。
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