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莉子は、普段俺のことを「祐ちゃん」って呼んでくれるのに、情事の時は「祐輔さん」と呼ぶ。
それが特別な気がして、普段も「祐輔さん」と呼んでほしい、と強請ったことがある。初めこそ頑張ってくれていたけど、やっぱり「祐輔さん」は言いづらいらしい。
だから普段は「祐ちゃん」のままだ。
年齢の割に慣れていなかったセックスも何度も夜を重ねればそれなりになった。初めての夜は年甲斐もなく緊張して上手く出来なかったことを覚えている。
久しぶりに異物を受け入れる彼女の中はとても狭くて、なんだか申し訳なさでいっぱいだった。
俺なんかがいいのだろうか、と思ってしまう反面、拙く辿々しい動きが愛おしくて、まっすぐに向けられる愛情が眩しかった。
「好き」だ、と何度も言って身体を震わせる莉子をめちゃめちゃに抱いた夜。
そばにいるよ、と強く抱きしめて眠った朝。
何をするのも億劫で一日中ベッドでごろごろして、ただ、欲望に忠実に過ごした午後。
サイドテーブルにデリバリーのピザとコーラを置いて、行儀が悪いね、と笑いながらシーツを汚さないように気をつけた。
純粋で、俺にはもったいないぐらい素直で眩しくて。だけど、そんな彼女といる自分は悪くない。重なる時間がいつの間にか1年を迎えようとしている今。
俺は。
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