第十一話 孫劉同盟

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第十一話 孫劉同盟

 文聘は、あと一息で劉備を追い詰め滅ぼすことができたが、あと一歩及ばず退却した。襄陽城の曹操は、その報告を聞き非常に悔しがっていた。 「劉備!どこまで、運の良い奴だ」  その時、荊州太守劉琮が蔡瑁と共にやってきた。 「曹操様、劉琮が拝謁します」 劉琮と蔡瑁との謁見でも、怒りに満ちた表情で落ち着きが無かった。 「劉琮、荊州の兵は、水軍と騎馬・歩兵合わせてどのくらいだ」 「はい、全て合わせて、八万ほど。皆、精鋭でございます」 「では、なぜ、お主は降伏した!劉備は、たかだか四千の兵士で戦ったのだ。お主には、義や信と言う心は無いのか!」 「曹操様、お許しを……」 「劉琮、このまま荊州太守に置いてやる、しかし、許都で献帝と同じ宮廷で過ごせ」 「え?荊州に置いてくれるのでは?約束が違います」 「荊州は、重要な地盤。能力のない奴には、守れん。では、行け!」 「曹操様、それはどうかお許しを!」  劉琮は、配下に連れられ、許都へと護送された。  龐徳公一族は、襄陽を出ず、曹操支配管轄となった荊州に居続けたが、強い支援もせず、漢王朝復興を願っていた。廖化も、龐徳公一族の安否を気にしていたが、襄陽で慎ましく過ごしていることを聞き、安堵した。  劉備は、長江を船で流れ、劉埼が守る土地である江夏一帯に居ついた。魯粛は、劉備と諸葛亮に進言し、呉巨は、凡夫であり頼りがいが無く、呉の孫権は、曹操と対峙する意向を示しているため、劉備と同盟を結びたいと話していた。それは良しと、劉備と諸葛亮は、呉に後日赴くことにした。  廖化は、張飛と趙雲と同じ船に甘寧と乗っていた。 「甘寧将軍、我が主を救ってくれたと聞きました、ありがとうございます」 「運の良い主さんだね、ほんと。元荊州の臣ってだけで、道案内のため魯粛殿に着き沿って来ていたのだ。我らも、偶然荊州に入り現状を知った」 「それは、運が良かったのですね」 「劉備って主さんは、強運の持ち主だよ、ほんとに」  廖化は、甘寧に対して畏怖の念が薄れ信頼を持つようになってきた。江夏城では、劉備軍と魯粛たちとの宴会が開かれた。  数日後、夏口では、魯粛と諸葛亮が呉へと旅立つところであった。荊州が曹操の手に落ちたという話が中華一帯に広まり、呉は、曹操に降伏するか、主戦論かで意見が真っ二つに分かれていた。魯粛は、劉備軍と同盟を結ぶことを約束し、諸葛亮を派遣し、孫劉同盟軍を曹操と対峙させる目的だった。廖化は、魯粛と共に旅立つ甘寧に礼をし、見送った。 「敵にしたくない人だ。その力は、我が主関羽将軍と同格か」  諸葛亮が呉へ旅立った次の日、劉備に謁見し、船を用意した廖立の事を話した。 「この度、夏口の河川より出発した船百隻は、武陵にいる私の親戚筋である名士、廖立の船です。我が首と交換条件として借り受けたので、お礼をしなければならず」 「うむ、しかし、お主の首を貰っても、嬉しくあるまい。某が荊州を領土としたとき、必ず武陵の太守にすることを約束する。今は、金品を持たない貧しい将であるため、名馬を数頭、今手元にある宝剣を一つ持って行ってくれぬか。今、手紙をしたためる」 「御意」  廖化は、曹操軍の目を掻い潜りながら、武陵の廖立邸宅へと向かった。廖立は、廖化が来ると、辺りを見回し、警戒しながら家に入れた。 「武陵は、今や曹操の領土、お主も危険だろうに、何しに来た」 「劉備様より、手紙と馬、宝剣を預かってきました。今は、これしかやるものが無いが、劉備軍が曹操を倒し、荊州を領土としたあかつきには、武陵を譲ると」 「劉備殿、曹操か荊州を奪うなどと、できると思うか。しかし、侮られたものだ、廖化、お前の首をここで斬ってくれようか」  廖化は、その言葉に動じなかった。劉備は、関羽や諸葛亮を配下に、呉と同盟を結ぼうとしている。必ず、何かやってくれると信じて来たからだ。 「このような、安い首ならばいくつでもやろう。廖立殿、劉備殿は必ず荊州を取る。某は、信じている」  廖立は、貰った宝剣を鞘から出し、廖化へ突きつけた。精工な刃が、青白く反射し光った。 「どうしてくれようかのお、この首」 「廖立殿の、いかようにも」  その時、後ろから、人の気配がして、 「まあ、待たれよ」  と声がした。声の主は、龐統であった。 「廖化は、俺にとっても親戚なのだ。命は俺に預けてくれないか」 「フン、良いだろう、で、どうするのだ?」 「廖立、この鳳雛と並ぶと評される智の持ち主だそうではないか。大口かどうか、勝負だ」 「良いだろう。で、何で対するのだ」 「将棋だ」 「は?本気か?」 「本気だ。俺が負けたら、廖化と俺の首を斬るがよい」 「いいだろう」  
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