第十二話 赤壁の戦い

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第十二話 赤壁の戦い

 夜、馬泰のどや顔を見ながら、この度の弓矢獲得の祝いを小さく行っていた。 「な、呉が使うためだったろ」 「しかし、無理な注文をするんだな、呉の大都督とやらは」  曜が言うと、 「いや、無理を承知で受けたのは孔明先生だ。ああやって、孔明先生を陥れるように策を巡らせているようだ。この度の件も、受けなければ殺されただろう。次も、命が狙われる件がある。我々で、助けよう」  廖化の話に、皆、言葉を失っていた。 周瑜は、少々やつれた疲れた表情をして、諸葛亮に尋ねた。魯粛も、傍で聞いていた。 「戦の準備は整い、数日後には会戦となろう。しかし、一つ心配なことがある」 「風ですね」  ハッとした表情を周瑜はしたが、ニヤッと笑い、 「さすが、まるで妖術使いのように人の心が分かるのだな、孔明殿」 「いえ、私も考えていたところでした」  魯粛が孔明に、 「このままでは、火計を仕掛けたとしても、風向きにで呉軍が火のあおりを喰らってしまう。いかがいたしましょうか」  諸葛亮は、暫く考えて、 「私は、以前仙人より太平道により風変の術を学んだことがあります。南屏山に壇を築き、その七星壇で三日祈祷すれば、五日間ほど東南の風を吹かせることができましょう」 「孔明殿、その言葉偽り無いか」 「無」  周瑜は、魯粛と目配せをして、部下に命じた。 「南屏山に七星壇を築き、巫女を使わせよ」  周瑜は、諸葛亮に、 「間違いなく風を変えられなければ……」 「軍律で裁いていただきます」  諸葛亮が、言葉を遮って言った。  その日から、諸葛亮は、寝ずに七星壇で祈りを続けた。廖化は、七星壇の下で、馬泰や熊等農夫の恰好をさせ下人に混ざり、風の向きが変わるのを待った。  三日後、昼。周瑜は、風向きが変わらない事へ苛立ち、諸葛亮へ兵を向けさせようとした。 「呂蒙、徐盛、丁奉!孔明の首を斬れ!」 「周瑜殿、向かっている際に、風が変わったときはいかがいたしますか?」 「よい、そのまま首を斬れ……」  諸葛亮の下に、呉の将達が早馬で向かっていった。その頃、諸葛亮は、祈りを終え立ち上がり空を見上げた。ふと、風が止んだかと思えば、なんと、東南の風向きへと変わっていった。それは、瞬く間に強くなっていく。  諸葛亮は、壇を降り、早足で祭壇から離れた。廖化は、顔に泥を塗り、農夫の服装をし、車を驢馬に担がせた。藁の荷車を用意し、諸葛亮を待った。配下も稗を荷車に乗せ引きながら並走した。 「廖化、待たせた」  祈祷した法衣を脱ぎ捨て、荷車の藁の中に入った。田んぼ道を進み、人目を避けながら驢馬を進ませた。南屏山へ向かう、呉の将達の早馬を横目に、廖化と配下たちは難を脱した。柴桑河川から夏口の船着き場に着くと、漁夫のいでたちの趙雲を見つけ、皆、船に乗り河岸より遠ざかった。 「廖化、その農夫の恰好、似合いではないか」  趙雲の一言に三人笑いが出た。 「子龍、そのような聡明な漁夫はおらぬ、よく見抜かれなかったな、それの方が疑う」  諸葛亮も、冗談を言い合った。 その時、柴桑の河岸では、徐盛と丁奉が悔しそうに眼をやっていた。 「呉の将軍達よ、周都督に伝えよ!風があるうちに攻めよと」  呉の兵たちは、その言葉を聞いて、皆引き返したようだった。  夏口へと着いた諸葛亮たちは、曹操が、退却するのを各々の持ち場で伏兵することになった。廖化は、主の関羽の下へ向かい、華容道へと進んだ。    
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