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第二話 曹操対呂布
廖淳は、徐州城にて、歩兵として整列した。
大将軍呂布は、軍に号令をかけ、連戦連勝であった、呂布軍を鼓舞していた。
「我が軍は、曹操の精鋭を退け、この徐州を基盤として中華に名を轟かす!」
方天画戟を持ち、朱の鎧に長い黒髪をなびかせ、羽の付いた羽織を身に纏い、身の丈を高い舞台から声を張っていた。
両脇を、陳宮と劉備玄徳、その下に、呂八健将という猛者、張遼、臧覇、郝萌、曹性、成廉、魏続、宋憲、侯成の八人が陣取り立っていた。兵隊列の前方でいた廖淳は、この光景を見て感激していた。
この頃、劉備は、徐州を呂布に奪われ小沛城の城主となっていた。張飛の失策と呂布の武力に負け、食客となっている時期であった。廖淳の前に、関羽と張飛が、兵隊長として立っていたが、その背中を見て、ふたりの大きさと畏怖で身震いした。
前から、二人の会話が聞こえた。
「呂布め、我が兄者から、徐州をぶんどっておきながら……」
「張飛、世は乱世。兄者は恨みで反乱を起こしても良いところ、なぜに呂布の懐にいるのか。兄者は、己を犠牲にしても、我ら配下を生きる道を選んだと言えよう」
こっそり、関羽と張飛の話を聞いていた。両将とも力強い立ち振る舞いであったが、廖淳は、特に関羽の美髯公と青龍偃月刀に目を奪われていた。
「曹操軍が、再度攻めてきている。劉備は、小沛で抑え、臧覇、魏続、侯成は、下邳を守れ」
曹操は、軍師として荀彧を置き、曹仁を下邳へ向かわせ、小沛を夏侯淵と韓浩が攻め、徐州には、夏侯惇と程昱が本陣として攻めてきた。
呂布は、陳宮と相談し、
「曹操は昨年、長子と側近、猛将を張繍との戦いで失っている。士気は上がっておりませぬ。簡単に退けられるでしょう」
陳宮の進言に、呂布は、頷いた。
その年の夏は、曹操軍と呂布軍は、何度か合戦を行った。夏侯惇と程昱の陣は、徐州へ侵攻してきたため、呂布と陳宮、張遼が本陣で迎え撃つよう対策し、会議をしていた。
「夏侯惇の副将として、李典と于禁がおります。手強い相手が徐州にやってきました」
「ふんっ…… この方天画戟と赤兎があれば、そんな奴ら、赤子をひねりつぶすように首を刎ねてくれる」
呂布は、自らの武を誇り、相手を奢っていた。呂布軍は、彭城から出て、城外で敵軍と対峙するようお互い真正面に陣を敷いた。先鋒の李典は、
「李典、ここにあり! 腕に自信のある者、来い!」
声を大きく呂布軍に威嚇をし、受けて立とうと張遼と一騎打ちをした。
「お主は、張遼だな。李典は、ここだ!」
「若輩者は引っ込んでろ、この張遼の相手をできるか!」
李典は、張遼に槍で攻撃するが、張遼は、全て打ち返し李典に反撃した。数合合わせると、李典の不利が明らかになった。
「つ、強すぎる」
張遼が、とどめを刺そうとしたが、攻撃前に背を向けられ、李典に逃げられた。
「逃げるのか、臆病者め!」
逃げる李典を追わず、夏侯惇が白兵戦を仕掛けてくるのを待った。
その日、廖淳は、高順の部隊に配属していた。その一騎打ちを廖淳は身近に見て、戦の現実を見て感激していた。
「す、すげぇ…… 張遼将軍」
初めての武将同士の激しい戦いを目の当たりにし、廖淳は、感動を覚えていた。その後、夏侯惇の号令で、両軍入り乱れ、数刻戦った。廖淳も、曹操軍に突っ込み、機敏さと鍛錬の成果、自ら士気が上がっているせいもあり、大いに敵兵を破った。高順部隊は、勢いに乗っていた。敵本陣、夏侯惇に目掛け攻め入ったが、夏侯惇が動き、高順とぶつかった。高順も力強かったが、夏侯惇は、曹操軍屈指の猛将であった。
十数合、槍と矛の打ち合いに火花が散る。周囲では、お互いの精鋭同士が斬り合い、戦は両軍入り乱れていた。
「片目の将であるのに、何故にここまで強いのだ。背中に目があるようだ……」
「高順、お主では、相手にならん」
勇将の高順でも太刀打ちできないほどの力を持つ夏侯惇の攻撃は疲れも知らず襲いかかって来た。夏侯惇が振り上げた矛は高順に一直線に向かっていた。
「高順殿!」
廖淳は、とっさに、手持ちの剣を夏侯惇に投げ、矛の軌道を避けさせた。高順は、寸でで矛を交わすことができ、退却した。
「兵卒の小僧め! 何だあいつは。無念、高順を仕留めれなかったか」
「危なかった、自分が向かえば、矛で一突きにされたであろう」
廖淳は、とっさの判断が間違っていなかったことにほっとした。高順部隊は退却時、曹操軍と呂布本陣と戦っている部隊と合流したため、呂布軍は曹操軍を挟み撃ちにする格好となり、曹操軍を撃退し、全体の戦として勝利を治めた。
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