プロローグ

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プロローグ

都立二宮高校に入学して二度目の春、今日は始業式だ。 今年は暖冬だったので、もう桜は完全に散っている。 去年は…どうだったんだっけな。 俺が生まれて初めての片思いに落ちた初日だったんだけど、あの瞬間以外あんまり覚えてないな。 …もう、一年たつのか。 正門周りを掃いてくれている用務員さんに挨拶をして、心の中で感謝もしながら、誰もいない正門までの一本道を歩く。 俺、速水健太は管弦楽部の部長を務めている。明日の入学式では式の間の演奏をするので、今日は朝から生徒会との最終調整。始業式自体は午前中だけですぐ終わるが、部員は今日も弁当持ちで、午後からは体育館の準備とリハーサルだ。 中学までは運動部だったから、俺の弁当箱はアホみたいにでっかい二段式を使ってたんだけど、さすがに高校生になって運動量がガタ落ちしたから、親に頼んで一段にしてもらってる。 春休みも毎日学校に来てたから、『外食費節約』と言いながら毎日弁当を作ってくれる親には感謝しかないな。 …言えてないけど。 忙しい毎日ではあるけれど、その分充実していると思う。 好きな子が近くにいるから…というのは置いといても、高校生活が楽しくて仕方ない。それはきっと、幸せなことだ。 こんなに朝早く登校しているのは、別に準備が終わっていないからというわけではない。 今日明日のタイムスケジュールは、書記と一緒に確認して全員に配布済み。 俺自身だって、一通りの内容は既に頭の中に入れてある。 あとは、生徒会長の澤田慎太郎と軽く最終の打ち合わせということで、登校時間よりも早めに学校に到着するように約束をしてあるんだけど。まずはクラスの確認だな。
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