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俺自身は、若菜との関係を進展させることを、いったん諦めつつある。
三年かけて、最悪の断絶状態からここまで戻した。
大学は別だから、今までみたいに毎日顔を合わせることはなくなる。
今だって、もう毎日学校には行っていないから、会えない日も増えてきているけど、それでも俺たちは幼なじみでお隣さんだ。
俺たちにとって、高校卒業は大したことじゃない。
明日も明後日も、窓を開ければ顔が見えるところに若菜はいる。
時間をかけて、一歩ずつ関係を改善していけたらって思うんだ。
自分自身がそんな状態なのに、健太には動くことを求めて陰でこそこそと画策しているわけで、本当は人のことなんか言えやしない。
卒業前に、ナーバスになってんのかな。
俺の気持ちに逆らうように、都立公園の桜はもう色づき始めている。
前途洋々…のはずだ。
第一志望校に合格して、来月には大学生活が始まる。
この先の自分の人生を、自分の努力次第でいかようにも切り拓いていける。
希望しかない。
隣に大切な人がいてくれたら…どんなに幸せだろう。
いや、物理的にはいま隣にいるんだけど。
でも、その人にはその人の気持ちがあって。俺は、その気持ちを完全には理解することができない。
どうすれば彼女が俺の方を見てくれるのか、何をすればいいのかがわからない。
もういいや…って、投げ出してしまいたくなることもある。
でも俺たちはまだまだ、終わらない。二楽章が終わった、くらいのところだろ。
若菜は、本当に嫌だったらこうして俺の隣に戻ることは絶対にしない。
俺が多少強引に窓を開けさせたことから、関係改善の道は始まったと思ってるけど、それだって若菜には拒む事由があったんだ。
川北のためとはいえ、こうして俺と二人で行動することも避けなくなった。
部のみんなが俺たちのことを見守ってくれていたから、というのは大きいけれど、若菜の心の傷は…少しずつ癒えていると信じたい。
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