26人が本棚に入れています
本棚に追加
/220ページ
「…楽しかったよ、三年間…」
特に会話がなくても俺たちは隣同士に立っていられる。自宅最寄り駅に近づいて、速度を落とし始めた車窓を眺めながら、若菜がそんなことを呟いた。
「…俺も」
少なくとも、友人関係を築きなおすことができた。
中学を卒業した時点とは、全然違う関係を作り上げることができたと思う。
俺たちの間にある信頼関係は、通う場所が離れたって揺らがない…と思う。多分…。
時々窓を開けてしゃべってさ、時々は外でも会ったり出かけたりして。
なんとなく親しい友人みたいなポジションを維持しながら、若菜の心がほどけていくのを気長に待つ。
俺の、消極的な長期計画だ。
自宅前まで一緒に歩いて、どちらからともなく右手を差し出した。
しっかり握手をして、笑顔を交わす。
「またね」
「おう」
そして俺たちは、それぞれの次のステージへ向かう。
完
最初のコメントを投稿しよう!