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ニセコ町運動公園、奥に大きく羊蹄山が見えている。
朝露に濡れた芝に朝日があたってキラキラ光る。
後ろにスプレーヤーを付けたスポーツトラクターに乗って源三がソフトボール場の外野を防除してまわっている。
「さて、どうするよ歳?」
「募集しても今のご時世なかなか人手は望めないしな」 水場で手動の噴霧器を背負った勇次郎が源三を遠くに見ながらぼやき噴霧器に水を入れながら歳郎が応える。
「俺等より年上なら務まらねえか」 苦笑いで言う勇次郎。
「源さんには出来るだけ楽な仕事振ってたが、それでもしんどいならそうかもな」 薬剤を小さじで計って噴霧器に入れる歳郎。
「新卒が来る訳もねえしどうしたもんか」
「居る人間で出来る事をするしかねえだろう」 水場から離れて行く勇次郎と難しい表情で噴霧器を背負う歳郎。
野球場の方に向かう歳郎と勇次郎の後ろ姿、野球場の奥に大きく見えるはずの羊蹄山は雲に隠れ見えなくなっている。
降り出した雨、遊歩道の水溜まりにポツリポツリと雨が落ちる。
「いや〜なんとか撒き終わった!」
「おつかれさん!」
「…」 スポーツトラクターで車庫に戻って来た源三を出迎える勇次郎と歳郎。
「手撒きもさっき終わった所だ!」
ニカッと声をかける勇次郎。
「そうかい」 スポーツトラクターに乗ったままの源三。
「…」 二人の後ろで噴霧器の竿を取り外す歳郎。
「よし、入れてくれるかい」
「おいさ」 竿を手に持つ歳郎の合図でスポーツトラクターを車庫に入れる源三。
本降りになった雨。
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