77人が本棚に入れています
本棚に追加
「最ッ高だよ柚希!!」
目を爛々と輝かせ、満面の笑みを浮かべてそう大声で叫んだ光を、柚希はただ目を点にさせて見つめるしかなかった。
そんな柚希の反応を気にも留めず、光は柚希の肩を掴んだ両手をブンブンと前後に揺らしながら、熱のこもった口調で語り始める。
「凄く心に来る曲だったよ! 何回でも何十回でも、一日中、いやもう一生無限ループできるくらいハマった! このままでももちろん最高なんだけど、どうせならちょっとロックテイストなアレンジを加えて歌詞をつけて、この世界で一番有名なアーティストに歌ってもらって世界中のみんなにこの曲を聴いてほしい!」
「ま、待て、落ち着け! テメェ何いってんだ!? とりあえず肩離せ!」
光のあまりの迫力と荒ぶりように、されるがままになっていた柚希が慌てて制止を求める。しかしテンションが最高潮まで上がりきっている光は、そんな言葉では止められなかった。
「落ち着いてなんかいられるわけないじゃん! 今すぐ視聴覚室に人を集めて、さっきの曲を柚希自身の演奏で聴いてもらおう!」
「だから人前で弾けねーっつってんだろ!?」
「今さっきまで俺の前で弾いてたじゃん!」
「あれはテメェがこっそり入ってきやがったからそういう形になったんだろうが!」
めんどくさい奴だなもう! と声を荒げた光が、ふと明後日の方向を見て行動を停止した。先程から何度も突飛な行動をとる光に、柚希は顔をしかめながら大きな溜め息を吐く。
「……今度はなんだよ」
呆れたようにそう問いかけた柚希に目を向け、光が柚希の肩を掴み直した。
「柚希、さっきの曲にドラムってつけれる?」
「は? あー……まあできねーことはねえけど……」
光は一体何を考えているのか。その答えはその直後に吐かれた光自身の言葉で判明した。
最初のコメントを投稿しよう!