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「おい、離せよ──」
「ねえ……あの制服、さっきの奴らと一緒じゃない?」
「ああ?」
葛西にそう言われて、ここから早く離れなければと内心で焦りながら、柚希ももう一度光たちの方を見る。
確かに先程沈めた生徒たちの制服によく似ている。
だが。
「だったらなんだって言うんだよ」
光たちを取り囲んでいる奴らが先程の生徒たちと同じ学校だからといって、柚希が関わる理由はない。
そう考える柚希の言葉を聞いて、葛西は眉尻を下げて柚希の方を向いた。
「もしあいつらがこーちゃんに絡んでる理由が、俺たちだったらどうする?」
「はあ?」
「報復だったら? さっきの奴らの」
「…………」
思わず目を逸らした柚希を、葛西は口を引き結んで見続ける。訴えかけてくる視線に耐え切れず、柚希は観念したように大きく息を吐いた。
「……チッ、行くぞ」
「そうこなくっちゃ!」
嬉しそうに返事をして、苛ついた様子で光たちの方へと歩き出した柚希の後をスキップでもしそうなぐらい弾みながら、葛西がついていく。
相手は五人。全員ガタイもよく、典型的な不良の格好で、普通の人なら近付くことすら出来ずにそそくさと逃げるであろう空間に向かって、柚希と葛西は躊躇うことなく歩を進める。
「あ、言っとくけどやり過ぎ禁止だかんねー?」
「知るか。けしかけたのはお前だからな」
もしかして俺余計なことしちゃった? という不安そうな言葉とは裏腹に、これ以上ない笑顔で嬉しそうに言った葛西に、柚希はまた大きく溜め息を吐いた。
「とっとと片付けて帰るぞ」
「あいあいさー!」
気だるげに言う柚希と元気いっぱいに敬礼付きで返事をする葛西。
そんな会話をしながら近付いてくる二人の姿に、光たちを取り囲む集団の一人が気付いた。
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