4話

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4話

「まっすーおっはよおおお!」  遅刻ギリギリの時間。教室に足を踏み入れた瞬間に、朝から元気すぎる挨拶と共にもはやタックルといってもいいほどの衝撃を突然その体に受けて、柚希は思わず尻餅をついて顔を痛みに歪ませた。 「ってえなテメェ……」 「おーはーよ! ほら、朝の挨拶は?」  教室内の生徒が皆息を飲むほど不機嫌さを露にした柚希が低い声で唸るように言った言葉を、その不機嫌の原因である葛西は全く気にする様子もなく更に挨拶を重ねる。  そんな葛西の様子に、柚希は声を荒げた。 「うっせえよ、早く退け!」 「挨拶してくれるまで退かないからね!」  駄々をこねる子供のように頬を膨らませながら、葛西が柚希の腹をぺしぺしと叩く。 「テメェな……!」 「俺が挨拶してんのに返さねえつもり?」  いい加減にしろ、と言おうとした瞬間、急に真顔になった葛西の声のトーンが二段階程落ちて、慣れてしまった張り詰める感覚に柚希はチッ、と小さく舌打ちをした。 「退けって言ってんだよ、殴るぞ」  葛西に負けず劣らず低いトーンで唸るように柚希がそう言うと、能面のようだった葛西の顔は一瞬にしてへら、と崩れて、「だって構ってくれないからー!」と柚希の上から退きながら大袈裟に眉を下げて唇を尖らせた。  やっと解放された柚希は、立ち上がって乱れた服を直して埃を払いながら自分の席に向かい、机に鞄を放り投げて席につく。そのまま一度溜め息を吐いて、今にでもスキップでもしそうな程浮かれながら席についた葛西に面倒臭そうな視線を向けた。 「お前テンション高くねえか今日」 「あ、わかっちゃう? わかっちゃう?」 「分かりたくねえけどな」 「実はさー昨日送ってった子たちといい感じになってさー! 連絡先交換したんだよねー! ほら!」  じゃーん! とスマートフォンの画面を見せる葛西に向かって、柚希がどうでもいい、と手をヒラヒラと振る。  そんな柚希の反応に気を悪くした様子もなく、ほんとは羨ましいくせに、とむしろ煽った葛西が、ふと思い出したように「そういえば」と口を開いた。
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