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──Long ago story 5──
僕は、自分の過去のことを話始めた。
「僕は、普通の家庭に産まれました。優しい母、時に厳しい父。僕は幸せでした。けれど何故か、僕が中学生になった頃、僕に対するいじめが起き始めたんです。」
「小学生の時から仲良い友達にも裏切られ、誰にも相談出来ず苦しんでいました。でも、母が僕の様子に気付き、初めていじめられてることを話したんです。」
思い出すのも嫌な過去。
でも、薫さんには何故か自然と話せている。
不思議だ…
「そして、母が学校に連絡し僕をいじめていた人達を呼び“優太に謝ってください“って言ったんです。いつも優しい母が、怒っているところを初めて見ました。」
「そのあとの母の言葉は、今でも覚えています。
“気付くのが遅くてごめんね“と、泣きながら言いました。その姿は、今でも鮮明に覚えています。」
段々声が震える…
この先の事を思い出すのが怖い。
しばらく僕は、黙ってしまった。
その時、薫さんが口を開いた。
「辛くなったのなら無理に話さなくても大丈夫ですよ。」
「すみません。薫さんは、最後まで辛い事を思い出しながら話してくれたのに…」
「そんなことをありません。私の過去なんかちっぽけなもんですよ。」
「ちっぽけなんて…」
でも、少し心が救われた気がした。
あの日から数日後、母は交通事故で亡くなった。
その場を目の当たりにしてしまった僕。
母の顔を思い出そうとしても、車に引かれる母の姿を思い出してしまう。
この時から、僕は荒れてしまった。
父に何度叱られても言うことを聞かず、夜家を出て遊びに行ったり、学校をサボったり、今思うと父はどんな気持ちだったのだろうか?
こんなにも荒れてしまった僕を最後まで大事に育ててくれた。
父が亡くなるとき、父はこう言った。
「幸せになれよ、優太。」
僕は父の手を握り、父が永遠の眠りにつくまで握りしめていた。
本当良い家族に産まれたと思った。
そして、この時心から幸せにしたい人と出会った。
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