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嫌な予感。
何故かそれは当たってしまった。
2人が海に入って、そこそこの深さまで来た瞬間、大きな揺れがした。
地震だ。
かなり揺れが強い。
僕は2人を見ると、奥から津波が来ている。
今、海には入ってはいけない。
この場から早く逃げなければならないのに、僕の体は勝手に動き、2人の所へ向かっていた。
「おい!そこのにーちゃん危ない。海になんて入るな!すぐに逃げるんだ!」
その時、誰か知らない男性に腕を掴まれていた。
「離してください!海の中に妻と娘がいるんです。」
「こんな強い津波じゃあ助からない。今はこの場から逃げるんだ!」
「でも……」
「俺も海の中に妻と娘がいる。にーちゃんと一緒で助けにいきたい……でもそうすると、俺たちまで死んでしまう。なら、2人の命の倍、生きてやらんと。奥さんも、娘ちゃんも悲しむよ…」
僕は何も言い返せなかった。
分かっていた。あんな波だと確実に、薫も明莉も死んでいることに。
俺は男性に引っ張られながら、高台まで避難した。この時僕は心の中で、薫と明莉に伝わるか分からないが、こう伝えた。
『来世ではもっと早く出会って、これまでの倍幸せになろう。来世の僕たちの姿を見たとき、2人が大好きだったランチを食べよう』
『それまで僕は、お店を経営し続けるよ…』
そう伝えた。
高台から海を見る。沢山の人が波に流されている。
遠くて誰が誰なのか分からないのに、何故かすぐに2人を見つけしまう。
僕は、膝から倒れこむ。
そして、声にならない涙を流していた。
薫と明莉が亡くなった。
僕の前で無邪気な笑顔を見せることはもう無い。
それからの僕は、絶望の世界だった。
何もする気が起きない。
お店もずっと休んでいる。伝えたはずなのに…
『お店を経営し続けるよ』って…
ごめん
薫、明莉。2人がいない世界ではもう生きていけない。
蝉が鳴いていた。
多分8月ぐらいだろう、生きていくのに辛くなった僕は、首吊り自殺をするためにホームセンターに縄を買いに行った…
誰も止める人なんていない。
そして、僕は首吊り自殺をした。
首吊り自殺というか、後追い自殺の方が正しいか…。
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