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家庭
12時前、そろそろランチを食べに来るお客様がいるだろう。
そう思ったとき、勢いよく扉が開いた。
そこには、5歳ぐらいの男の子がお店の中へ入ってきた。
「こら!ゆうと」
外から、お母様らしき人の怒鳴る声が聞こえる。それと同時にお店の中へ入ってきた。
「すみません…この子が…」
「いえ、大丈夫ですよ」
ゆうとくんという男の子のお母様が頭を下げる。
「ゆうとも謝りなさい」
「ごっごめんなさい…」
ゆうとくんは納得のいかない顔をしている。
ゆうとくんの世界は、まだ幼いというのもあり、少し分かりずらい。けど、はっきり分かるのはこの子は優しい子だ。
勢いよく扉を開けてお店の中に入ったのも、お母様のためだろう。
「すみません…お手洗いいいですか?」
「どうぞ…右の奥の方です。」
「ありがとうございます」
僕は、キッチンを出て、ゆうとくんの前に立ち、しゃがむ。
「ゆうとくんって言ったかな?」
「うん…」
「勢いよく扉を開けてお店に入ってきたのは、お母さんのためだよね。」
「うん…」
僕のお店のランチは、10品までで無くなりしだい終了だ。それが無くなったらお母様がランチを食べれないと思ったのだろう。
だから、勢いよく扉を開けお店の中に入ってきたのだろう。
「ゆうとくんの思いお母さんに言ってみたら?」
「うん…がんばる」
「頑張って…好きな席に座ってて良いからね」
「うん…」
ゆうとくんは右奥の席に座った。
それから数分後、ゆうとくんのお母様が出てきて、ゆうとくんの座っている席に座った。
そのあとすぐにお母様に呼ばれ、ランチセットを2つ注文された。
準備をしている間、ゆうとくんとお母様の話声が聞こえる。
そのあとお母様のすすり泣きが聞こえてきた。
僕はそっと出来たランチをテーブルの上に置いた。
「お待たせしました。ランチセットです」
「あっ、ありがとうございます」
「ごゆっくりどうぞ」
そう言って、キチンの方へ戻った。
お母様の世界は悲しい世界。けれどまだ、息子であるゆうとくんのお陰で、気持ちが保たれてるのだろう。
お母様の左手の薬指には、婚約指輪がついていなかった。
お父様との喧嘩が耐えなく、数日前に離婚されたのだろう。
それでも、お母様はお父様のことを愛していた。いくら喧嘩してても……
普通、喧嘩が耐えなく離婚したのなら、悲しい気持ちになるのだろうか。何で喧嘩ばかりしていたのに、そんな人を今でも愛せるのだろうか。
僕には分からない。
けれど、幸せな家庭をつくるなんて難しい。
最初は幸せな家庭だったものが、ちょっとしたことで崩壊する可能性もある。
僕の家庭はそうだったから……
ランチセットを食べ終えた、ゆうとくんとお母様は会計をして、お店を出ていった。
それと同時に、また新しいお客様がこられた。
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