家庭

2/2
前へ
/16ページ
次へ
──Long ago story 3── カフェオレ代をもらってから数日がたった。 あの女性は来ない。仕事が忙しいのだろう。 時計を見る、7時過ぎだ。 あと閉めるのに、数十分。 その時、カランカランと扉の上に掛けてある、ベルがなった。 「いらっしゃいませ」 そこには、あの女性がいた。 「良かった…閉まってなくて…。数日前、カフェオレ代を持ってきたとき、7時にお店を閉めていたので、今日は一か八かで来たんですけど…閉めるの7時30分にしたんですね」 女性はそう言って、ほっとした顔をする。 「えっえぇ…もう6月にはいりますし、日が上るのも遅いので、少し遅くまで開けようかと思いまして。」 貴方のために閉めるのを遅くしたなんて、恥ずかしくて言えない。 「そうなんですね、良かった。」 「では、お好きな席へ」 その女性はカウンターに座った。 正直、カウンター前に来てくれて僕は嬉しかった。 きっとこの時から僕は、この女性に特別な気持ちが生まれていた。 「えっと…注文良いですか?」 「ご注文をお聞きします」 「カフェオレ1つお願いします」 「かしこまりました。少々お待ちください」 女性が頼まれたカフェオレを僕は、手慣れた手つきで作る。 「お待たせしました。カフェオレでございます」 「ありがとうございます。この前雨宿りさしていただいた時に飲んだカフェオレが美味しく、これまで飲んできた中で1番美味しいです。」 「ありがとうございます。あの…お名前お聞きしてもよろしいですか」 「名前…(かおり)と言います」 「薫さん…素敵な名前ですね」 「そうですか…ありがとうございます」 薫さんは、とても嬉しそうに笑う。 その笑顔に僕は、惚れてしまった。 「えっと…店主さんのお名前もお聞きしても良いですか?」 「優太と言います。優しいに太陽の太です」 「名前の通り、優しくて、太陽みたいに笑顔が素敵な方ですね」 「そっそうでしょか…」 自分の名前を素敵なんて言われたの初めてだ。 僕は、あまりこの名前を気に入っていない。 本当の僕は……そんなんじゃない。 心なんて真っ黒でぐちゃぐちゃだ…… 来るお客様の世界より、自分自身の世界が1番はっきり見える。 それが、僕にとって辛い。 「あの…私この前優太さんが言っていた、緊張の世界についての話なんですが…」 薫さんは思い詰めた表情をしている。 「のせいなのかなって…」 「あの時…」 「少し、私の昔の話して良いですか…ゆっくりになっちゃうかもれませんが。」 「良いですよ…ゆっくり薫さんのペースで話してください。」 「ありがとう……ございます」 そして、薫さんは昔の話を話し始めた……
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加