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──Long ago story 3──
カフェオレ代をもらってから数日がたった。
あの女性は来ない。仕事が忙しいのだろう。
時計を見る、7時過ぎだ。
あと閉めるのに、数十分。
その時、カランカランと扉の上に掛けてある、ベルがなった。
「いらっしゃいませ」
そこには、あの女性がいた。
「良かった…閉まってなくて…。数日前、カフェオレ代を持ってきたとき、7時にお店を閉めていたので、今日は一か八かで来たんですけど…閉めるの7時30分にしたんですね」
女性はそう言って、ほっとした顔をする。
「えっえぇ…もう6月にはいりますし、日が上るのも遅いので、少し遅くまで開けようかと思いまして。」
貴方のために閉めるのを遅くしたなんて、恥ずかしくて言えない。
「そうなんですね、良かった。」
「では、お好きな席へ」
その女性はカウンターに座った。
正直、カウンター前に来てくれて僕は嬉しかった。
きっとこの時から僕は、この女性に特別な気持ちが生まれていた。
「えっと…注文良いですか?」
「ご注文をお聞きします」
「カフェオレ1つお願いします」
「かしこまりました。少々お待ちください」
女性が頼まれたカフェオレを僕は、手慣れた手つきで作る。
「お待たせしました。カフェオレでございます」
「ありがとうございます。この前雨宿りさしていただいた時に飲んだカフェオレが美味しく、これまで飲んできた中で1番美味しいです。」
「ありがとうございます。あの…お名前お聞きしてもよろしいですか」
「名前…薫と言います」
「薫さん…素敵な名前ですね」
「そうですか…ありがとうございます」
薫さんは、とても嬉しそうに笑う。
その笑顔に僕は、惚れてしまった。
「えっと…店主さんのお名前もお聞きしても良いですか?」
「優太と言います。優しいに太陽の太です」
「名前の通り、優しくて、太陽みたいに笑顔が素敵な方ですね」
「そっそうでしょか…」
自分の名前を素敵なんて言われたの初めてだ。
僕は、あまりこの名前を気に入っていない。
本当の僕は……そんなんじゃない。
心なんて真っ黒でぐちゃぐちゃだ……
来るお客様の世界より、自分自身の世界が1番はっきり見える。
それが、僕にとって辛い。
「あの…私この前優太さんが言っていた、緊張の世界についての話なんですが…」
薫さんは思い詰めた表情をしている。
「あの時のせいなのかなって…」
「あの時…」
「少し、私の昔の話して良いですか…ゆっくりになっちゃうかもれませんが。」
「良いですよ…ゆっくり薫さんのペースで話してください。」
「ありがとう……ございます」
そして、薫さんは昔の話を話し始めた……
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