友達

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──Long ago story 4── 薫さんは、ゆっくり口を開きの話を始めた。 「この前、優太さんが言った通り、表向きはいつも元気で明るい性格なんですけど、本当は私、そんな人間じゃないんです…」 「弱くて、惨めで、すぐ人の目を気にしてるんです。自分…」 薫さんは、今にも泣きそうな顔をしている。 このまま止めずに話を聞いた方が良いのだろうか。 僕は少し迷ったが、薫さんが話そうとしているのに、止めるのもと思い、そのまま話を聞くことにした。 「そんな自分を隠しながら、ずっと過ごしていました。でも、高校3年生の文化祭で事は起きたんです。」 「私のクラスの出し物は、演劇をすることになったんです。舞台はシンデレラでした。役決めの時誰も、シンデレラ役をやりたがりませんでした。 そんな中、私の友達が急に手をあげて、“薫がシンデレラが良いと思います“って言ったんです。」 「私…正直やりたくありませんでした。」 確かに、指名されたら断れないだろう。 それに、薫さんはクラスのムードメーカー的存在だったのだろう… 「それに皆が賛成して、私も断れなくて私が、シンデレラ役になったんです。シンデレラ役になった私は、一生懸命練習しました。台詞も多くて覚えるのが大変でした。でも、最後の文化祭だから失敗したくなくて…」 辛い表情。 思い出すのも辛いだろう… だから、薫さんはずっと、緊張した世界にいるのだろう。 「でも、本番で緊張し過ぎて台詞を忘れてしまったんです。すぐに思い出したんですが、忘れている間、時間が止まっている感じがしました。」 「台詞を忘れてしまったけど、なんとか舞台は成功に収まったんです。終わったあと、舞台裏で私、何回も皆に謝りました。皆慰めてくれましたが、その目がなんか怖かったんです。“君のせいで舞台は失敗した“って言われてる感じがして…」 「誰かに何かを頼まれたとき、失敗したらどうしようって、誰しもが緊張すると思うんですが、私はその倍緊張してしまうんです。その時の経験がトラウマで…」 「多分これが私がずっと、緊張の世界にいる理由だと思います。」 やっと薫さんが、緊張の世界で戦っている理由が分かった。 僕はなんと声を掛ければ良いか分からなかった。 “辛かったですよね“と言うのも違う気がした。 「あの…少し僕も過去の話して良いですか?」 「え?」 「本当は僕も、優しくて、太陽のような人じゃないんです。」 何でこの時、こう言ったのか分からない。 ただ薫さんに、自分の過去を聞いてほしかったのだろう。 「どうぞ…優太さんのペースで話してくださいね」 薫さんは、良い人過ぎる。 薫さんの優しさに、涙しそうになった。 そして、僕はゆっくり口を開き自分の過去を話し始めた…
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