恋人

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3時前、大学生ぐらいのカップルがお店に来られた。 「いらっしゃいませ」 初めて来たお客様だ。 カップルは、昼過ぎに来られた女の子3人組が、座っていた席に座った。 彼女さんは、キョロキョロと店内を見ている。 彼女さんの世界は、大好きな世界。 初めて、彼氏さんが出来たのだろう。 そう彼女さんの世界を見ていると、彼氏さんに声を掛けられた。 「すみません」 「はい」 「あの…まだランチセット残ってますか?」 「はい。あと2セット残っていますよ。」 「じゃあ…ランチセット2つお願いします」 「かしこまりました。少々お待ちください」 注文されたメニューを手際よく準備をする。 彼氏さんの世界は、彼女さんと同じだかどこか掛けている世界。 まるで、自分を見ているようだった。 人は見た目で判断してはいけないと、改めて思った。 「お待たせしました。ランチセットです」 「ありがとうございます」 彼女さんが、嬉しそうな笑顔で応えた。 その笑顔がどことなく“薫“に似ている気がした。 ランチセットを机に置き、僕はキッチンへと戻った。 2人の会話が聞こえる… 「雰囲気の良いカフェだね。“Your Word“あなたの世界。良い名前。」 「そうだね…」 「これからうち、常連さんになろうかな…大学終わりに少しお茶して帰るみたいな。ちょっとお洒落だよね…」 「常連さんになるんだったら、僕もなろうかな。2人でまたお茶したいしね…」 「私も“優太“とお茶したいしね…」 「これから行けるときには行こっか“薫“。」 2人には申し訳ない。 今日で、このお店を閉めなくてはいけない。 明日来てもこのお店はない。 記憶からもこのカフェのことは覚えてない。 今日が、最後のようだ。 後は、可愛いくて愛おしい“あの子“と、7時過ぎに来る“薫“を待つだけだ。
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